研究課題/領域番号 |
17H01540
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
鳥越 俊彦 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20301400)
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研究分担者 |
橋本 真一 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任教授 (00313099)
廣橋 良彦 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30516901)
塚原 智英 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (20404634)
金関 貴幸 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50531266)
中津川 宗秀 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70448596)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Tumor microenvironment / Cancer stem cell / Single cell analysis / Tumor immune escape / Immune response / Immunohistochemistry |
研究実績の概要 |
(1)がん組織微小環境の単細胞遺伝子発現解析:昨年度に引き続き、消化器がん、婦人科がん、悪性黒色腫の各新鮮がん組織を単細胞に分離し、NGSによって網羅的単細胞遺伝子発現解析を実施した。データをクラスタリング解析し、がん細胞・免疫細胞・間質細胞の3グループに分類。発現遺伝子の質的・量的相違と特徴によってがん組織微小環境のクラスタリング解析を実施した。その結果、幹細胞形質を有すがん細胞(がん幹細胞)が豊富な微小環境と、分化がん細胞が豊富な微小環境を区別することができた。両者の相違について、遺伝子発現と免疫組織染色によって分析した。また、がん細胞の遺伝子が免疫細胞に取り込まれる現象について、末梢血単核球細胞を用いた遺伝子発現解析を実施した。この現象は、がん細胞が宿主の免疫応答を制御するメカニズムと関係していることが推察された。 (2)免疫細胞の単細胞遺伝子発現解析:がん組織に浸潤する免疫細胞(TILs)に発現する免疫関連遺伝子の発現を単細胞遺伝子発現解析によって分析し、遺伝子発現パターンによってT-cell Inflamed type、T-cell excluded type、Immune desert typeに分類。それぞれを特徴づけるsignature geneについて解析した。 (3)がん組織微小環境の個性を区別する免疫組織学マーカーの確立:遺伝子発現解析結果をもとに、ホルマリン固定標本の免疫組織染色によってがん組織微小環境を類型化するための染色用抗体のパネルを準備し、大腸がん組織と頭頸部がん組織を対象に、免疫組織染色パネル検査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種がん組織の単細胞遺伝子発現解析はほぼ計画通り行われ、予想外の興味深い解析結果が得られている。昨年に引き続き、悪性黒色腫およびメルケル細胞癌の解析も実施することができた。婦人科がんのサンプルが不足しているので、今後重点的に検体数を増やす努力を継続する。がん組織微小環境の類型化に向けた免疫組織染色パネル検査は、大腸がんを対象にして進展しつつある。大腸がんのCD8陽性T細胞の浸潤数を定量化したImmunoscoreに関する国際共同研究成果はThe Lancerに公表された。
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今後の研究の推進方策 |
組織単細胞遺伝子発現解析技術は開発途上の技術であるため、さらなる改良による解析スピードと解析精度の向上が必要である。今後はMSI陽性子宮体がんなどの稀少検体の集積に取り組む。単細胞T細胞抗原受容体(TCR)遺伝子解析については、今後さらに技術的な問題をクリアしなければならない。1年以内の解決を目指す。また、Digital PathologyとA.I.の新技術を開発し、免疫組織染色結果の定量化と標準化を目指す。
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