研究課題
悪性腫瘍に対する新規治療法の開発は急務である。本研究では、これまでの基礎研究と臨床研究を基盤に、遺伝子治療のための第二世代麻疹ウイルスベクターを構築して、臨床的有用性を高めた画期的な遺伝子改変T細胞療法を開発する。すなわち、(1)新規遺伝子改変T細胞療法用低免疫原性麻疹ウイルスベクターとベクター産生細胞の開発、および(2)T細胞活性化能を有する共阻害分子・共刺激分子のデコイ遺伝子構築、を実施する。ここで第二世代麻疹ウイルスベクターにT細胞受容体(TCR)やキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を搭載させて、新規遺伝子改変T細胞療法を開発する。平成30年度は、(1)新規遺伝子改変T細胞療法用低免疫原性麻疹ウイルスベクターとベクター産生細胞の開発において、ウイルス表面抗原となるH・F遺伝子の両方を除いた低免疫原性第二世代麻疹ウイルスベクターを産生させるパッケージング細胞の開発と産生条件を検討し、第二世代麻疹ウイルスベクターの産生に成功した。さらに、本ベクターを用いて健常人由来CD3陽性T細胞への遺伝子導入に成功した(導入効率89.0%)。現在までに、本ベクターに搭載するCAR遺伝子(2種類)を選定してベクターを構築中である。また、(2)T細胞活性化能を有する共阻害分子・共刺激分子のデコイ遺伝子構築については、本研究実施期間中に既に同様研究が国外で発表されたことから研究内容を一部修正した。即ちデコイ遺伝子の代わりに特異的抗腫瘍効果が期待でき、遺伝子治療としての新規性が極めて高い、L-methionine-α-deamino-γ-mercaptomethane-lyase (METase)を米国UCSDのRobert M. Hoffman博士との共同研究として利用し、低免疫原性麻疹ウイルスベクターを用いたCART療法との併用効果についてin vitroおよびin vivoで検討する。
3: やや遅れている
平成30年度は下記を実施した。(1)新規遺伝子改変T 細胞療法用低免疫原性麻疹ウイルスベクターとベクター産生細胞の開発において、パッケージング細胞の樹立と第二世代麻疹ウイルスベクター粒子の産生は、平成29年度までに得られた「宿主細胞の種類」および「H蛋白とF蛋白供給の量・タイミング」の検討を元に、2種類のパッケージング細胞を樹立して、第二世代麻疹ウイルスベクターの産生方法を確立した。確立した方法で、第二世代麻疹ウイルスベクターを安定的に産生(導入力価 > 1.0×106 IU/ml)する事が可能となった。さらに、健常人末梢血単核球よりCD3陽性T細胞を単離して、第二世代麻疹ウイルスベクターを用いてレポーター遺伝子を導入した結果、高い導入効率(MOI=3で87.2%, MOI=5で89.0%)を示した。現在、第二世代麻疹ウイルスベクターを導入した健常人由来CD3陽性T細胞のさらなる解析(ウイルス抗原消失、導入遺伝子の発現期間、等)を実施中である。加えて、CAR遺伝子(2種類)、腫瘍特異的TCR(1種類)を搭載した第二世代麻疹ウイルスベクターを構築中である。また、(2)T細胞活性化能を有する共阻害分子・共刺激分子のデコイ遺伝子構築においては研究計画を見直し、L-methionine-α-deamino-γ-mercaptomethane-lyase (METase)を搭載する予定である。
平成31年度においては、以下のように研究を実施する予定である。CAR遺伝子(2種類)、腫瘍特異的TCR(1種類)を搭載した第二世代麻疹ウイルスベクターを開発し、さらに「CAR遺伝子導入T(CART)細胞の抗腫瘍活性を増強する新規遺伝子治療法の開発」としてL-methionine-α-deamino-γ-mercaptomethane-lyase (METase)を搭載した第二世代麻疹ウイルスベクターを作製する。すなわち、産生された第二世代麻疹ウイルスベクターを用いてCARもしくは腫瘍特異的TCRをヒトCD3陽性T細胞に導入して、特異的抗体を用いて、CAR/TCR発現効率や不要なウイルス抗原消失を確認する。加えて、可能であれば既存のウイルスベクター(レトロウイルスベクター等)に対する本ベクターの優位性を比較評価する。次に、CARもしくはTCR発現CD3陽性T細胞の血液・固形腫瘍に対する治療効果をin vitro(サイトカイン産生能, 癌細胞障害活性)およびin vivo(担癌マウスモデル)で確認する。さらに、CARもしくはTCR発現T細胞の活性能向上を確認する目的で、特異的抗腫瘍効果が期待でき、遺伝子治療としての新規性が極めて高い、METaseを米国UCSDのRobert M. Hoffman博士との共同研究として利用し、LMVV-CART療法との併用効果についてin vitroおよびin vivoで検討する。また遺伝子導入T細胞の活性化・疲弊の評価(増殖能・サイトカイン産生能・細胞障害能)を実施する。
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