研究課題
(1)トランスオミクス的ミトコンドリア機能評価:まずを5台のLC-MS/MSを使い、高感度に1000分子の検出が可能なメタボロミクスの測定系を作り上げた。この系 は、2018年度の本研究費に基づく研究成果の多くで、活用されている。そして、ミトコンドリ細胞全体ではなく、ミトコンドリア内代謝を特異的に測定するため の高速、効率的に無傷のミトコンドリアを生成する方法を開発し、細胞全体の代謝とミトコンドリア内特異的代謝を区別して測定する系を完成し、その有用性をNAD+の細胞内動態に注目することで示すことが出来た(論文作成中)。(2)ミトコンドリア関連疾患の予防とその治療に向けた戦略的開発: (i) ミトコンドリア局在タンパク質p32の遺伝子KOマウスと自然免疫疫に関しては、LPS刺激により炎症性サイトカインIL6の発現が数十倍に増強することと、AT4を介した部分子メカニズムを明らかかにした(EbioMedicine2017)。さらに、樹状細胞特異的KOマウスを用いて抗原刺激に伴う樹状細胞の抗原提示能の亢進にPyruvate Dehydorgense(PDH)の活性化が必要で、その活性化にp32分子が必要であることを明らかした(Cell Rep2018)。(ii)心筋特異的p32KOマウスの拡張性心筋症の発症は、オートファジー異常による心筋ミトコンドリア品質低下に起因していた。オートファジーの異常はオートファゴゾーム形成ではなく、むしろリソソームの機能低下によるオートリソソーム内の分解機能異常であることを明らかにした。p32分子の欠損はミトコンドリア依存性のNAD+の合成低下によるリソーソーム膜状に限局したATP合成不全が原因であり、ミトコンドリア翻訳異常からリソソームの機能異常に至る新しい経路を明らかにした(論文作成中)。
2: おおむね順調に進展している
p32-/-マウスと免疫に関連する研究に関しては、p32遺伝子KOによるミトコンドリアストレスがLPS誘導自然免疫反応を非常に強く増強させることとその分子メ カニズムを明らかにできた。さらに、獲得免疫におけるミトコンドリア機能の関与を明らかにするために、抗原提示細胞である樹状細胞特異的p32-/-KOを作成し、抗原提示能の変化とその分子メカニズム解明へと研究を展開しており、PDHの活性化が重要であることを明らかするなど、計画通りに進んでいる。 癌細胞とミトコンドリア研究では、固形癌のみならず白血病化におけるミトコンドリア機能の貢献に展開し、血球細胞特異的p32-/-KOマウスに白血病発病モデ ルを組み合わせて、その白血病化を観察している。白血病モデルに関しては、担当研究者の移動のために計画遂行が遅れているが、新しい人材の補充の計画をしているので、再開の見込みである。 ミトコンドリアDNA特異的転写因子であるTFAMを臓器特異的に過剰発現させるトランスジェーニックマウス作成に関しては、順調にCre-LoxPシステム制御下に TFAM遺伝子を導入したマウスが作成できた。まずは骨格筋、心筋特異的に発現させるための交配を開始しており、必要な数のマウスが適週齢に達した時点で心筋梗塞誘発心不全モデルの実験が実施できる見込みである。
(1)ミトコンドリアからのシグナルが免疫応答に果たす役割について、これまで行ってきた外来抗原に対する応答の研究が一区切りついたので、自己免疫反応を中心に解析する。(2)バイオマーカーの探索については、血清全体から血清中に含まれるマイクロベジクルに焦点を当てて解析を行う予定である。現在最も注目されている血中はベジクルはエクソーソムであるが、それは細胞内小胞から放出されているため、必ずしも元の由来組織を明確に特定できないのに比べ、マイクロベジクルに注目している理由は、マイクロベジクルは細胞膜のpinched offによって放出されるため、由来細胞の細胞膜を保持しており、その表面抗原を特定することで由来細胞を明確に特定出来るというベジクルであるという特性に注目しているからである。このことによって、ミトコンドリア異常を持つ組織の特定を血液を用いて解析するのに有利と考えている。(3)ミトコンドリアの品質管理に関しては引き続きミトコンドリア内のプロテアーゼ機能に着目して解析を進める。(4)p32の臓器特異的ノックアウトマウス、TFAMの臓器特異的発現マウスの作製とその解析は引きつづき継続する。特に後者は心不全進展におけるTFAMの抑止効果の分子メカニズムの解析を開始する予定にしている。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
Frontiers in Cellular Neuroscience
巻: 13 ページ: 31
10.3389/fncel.2019.00031
Influenza Other Respir Viruses
巻: 13 ページ: 115-122
10.1111/irv.12624
J Infect Chemother
巻: 25 ページ: 222-224
10.1016/j.jiac.2018.08.012
J Perinatol
巻: 39 ページ: 212-219
10.1038/s41372-018-0262-0
Diabetes Care
巻: 41 ページ: 1061-1067
10.2337/dc17-2004
Ann Clin Microbiol Antimicrob
巻: 17 ページ: 31
10.1186/s12941-018-0282-9
AJP Rep
巻: 8 ページ: e68-e70
10.1055/s-0038-1639614
Cell Reports
巻: 25 ページ: 1800
10.1016/j.celrep.2018.10.057
J. Affect. Disord.
巻: 231 ページ: 74-82
10.1016/j.jad.2018.01.014
Sci Rep
巻: 8 ページ: 5801
10.1038/s41598-018-24251-z