研究課題
1)1 細胞メカニカルストレス応答定量解析法(生体1細胞RNA-seq解析法)の確立と応用:横行大動脈縮窄による心不全モデルマウスにおける心筋細胞のシングルセルRNA-seq解析により、圧負荷後の心筋リモデリングにおける遺伝子発現ダイナミクスを詳細に捉えることに成功した。圧負荷後に肥大型心筋細胞が代償型と不全型の2つのパターンに分岐すること、不全型心筋への誘導にはp53シグナルが必須であることを証明した(Nomura, Komuro, et al. Nat Commun. 2018)。2)1 細胞メカニカルストレス応答in situ定量解析法(生体1分子RNA FISH法)の確立と応用:1分子RNA FISH法とIn Cell Analyzer6000の統合によるハイスループットイメージングにより、生体1分子RNA FISH法を確立した。これにより圧負荷後に見られる胎児型ミオシン発現心筋は、心臓の中間層において多く出現すること、この胎児型心筋細胞は肥大型心筋ではなくサイズが小さいことを明らかにした(Satoh, Komuro, et al. J Mol Cell Cardiol. 2019)。3)非心筋細胞の1細胞RNA-seq解析:心不全過程における非心筋細胞の一細胞遺伝子発現解析により、心臓非心筋細胞の詳細な分類が可能となった。これにより線維芽細胞における未知の遺伝子マーカーを同定し、その機能解析を行った。4)ヒト心不全患者の1細胞遺伝子発現解析:心不全患者の心臓シングルセル解析技術を確立して患者の病態特異的な遺伝子発現パターンを同定し、1細胞解析技術の臨床応用を可能にした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究は、心臓のストレス応答の細胞間不均一性が生まれる要因とその病的意義の解明を目的としており、1)1 細胞メカニカルストレス応答定量解析法(生体1細胞RNA-seq解析法)の確立、2)1 細胞メカニカルストレス応答in situ定量解析法(生体1分子RNA FISH法)の確立、3)ストレス応答による心筋細胞(非心筋細胞)の機能的な分類、4)ヒト心不全患者の1細胞遺伝子発現解析技術の確立、を目指したものである。当初の計画はほぼ達成しているため、当初の計画以上に進展している。
1)1 細胞メカニカルストレス応答定量解析法(生体1細胞RNA-seq解析法):心不全過程の心筋細胞が代償型・不全型の心筋細胞に分岐するメカニズムを明らかにする。特に胎児型心筋が出現する際に活性化するシグナルをエピゲノム解析などで同定して、それを誘導する機序を解明し、in vitroに誘導できるか検証する。2)1 細胞メカニカルストレス応答in situ定量解析法(生体1分子RNA FISH法):バーチャルスライドシステムによる心臓全切片解析・全心臓解析に応用して臓器の全細胞遺伝子発現解析技術を確立し、心不全心臓の遺伝子発現における解剖学的特徴の全貌把握を目指すとともに、超解像顕微鏡による詳細な観察から心筋細胞不全化における特徴的な細胞形態変化を捉える。3)非心筋細胞の1細胞RNA-seq解析:心不全における非心筋細胞の形質転換(例えば内皮細胞と線維芽細胞の間の転換など)についてDNAバーコード技術を応用して細胞系譜を追求するとともに、その細胞の遺伝子発現を同時に捉えて、細胞のclonalityとphenotypeを同時に解析する。4)ヒト心不全患者の1細胞遺伝子発現解析:心不全患者ごとに心臓細胞の遺伝子発現プロファイルと臨床経過を統合解析し、有効な治療法の選択や予後の推定につながる要因を追求する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 図書 (3件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
J Mol Cell Cardiol.
巻: 128 ページ: 90-95
10.1016/j.yjmcc.2019.01.020.
巻: 128 ページ: 77-89
10.1016/j.yjmcc.2018.12.018.
Nat Commun.
巻: 9 ページ: 4435
10.1038/s41467-018-06639-7.