研究課題
我々は、Xyl-GlcAリピートが効率的に修飾される組み換えDGの発現・調製方法を世界で初めて開発し、糖タンパク質質量分析法、精密質量分析法、ガスクロマトグラフィー、二次元NMRなどの糖質化学的な手法を駆使し、糖鎖の中に、リビトールリン酸という物質が2つ連なった形で存在することを見出した。このリビトールリン酸のタンデム構造がXyl-GlcAリピートとCoreM3と呼ばれるO-マンノース型糖鎖を結び、糖鎖がコアタンパク部分に連結する様式が初めて明らかになった。リビトールリン酸は、ペントース系の糖アルコールリン酸で、これまで哺乳類で存在が確認されておらず、我々が発見した新規翻訳後修飾体となる。次に我々は、タンデムリビトールリン酸の生合成系の解析を行った。リビトールリン酸は哺乳類で用いられている前例はなかったが、バクテリアの細胞壁成分として用いられている報告がある。バクテリアでは、CDP-リビトールという物質を供与体に糖鎖にリビトールリン酸が組み込まれる。興味深いことにバクテリアCDP-リビトール合成酵素TarIは、DG異常症遺伝子のひとつISPDと類似性があり、我々は実際にISPDがCDP-リビトールを合成するヒト酵素であることを証明した。更に、フクチン、そして、肢帯型筋ジストロフィー2I/先天型筋ジストロフィー1Cの原因遺伝子FKRPが、CDP-リビトールを供与体基質として、リビトールリン酸を糖鎖に順に組み込むリビトールリン酸転移酵素であることを発見した。また、CRISPR/Cas9システムにより、それぞれの遺伝子を欠損させた疾患モデル細胞を樹立し、リビトールリン酸修飾の不全が生じていることを示した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度までの計画として病態解明が進んでおり、おおむね順調に進展している。
ポストリン酸糖鎖の構造の全同定を行い、フクチンなどαジストログリカノパチー関連分子の酵素活性同定と病態解明を行う。また至適薬剤の選択がなされたアンチセンス・モルフォリノ治療を、臨床応用に向けて開発を進めるとともに、実験的に中枢神経系への有効性を証明する。
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