研究課題
研究代表者らが独自に見出した臓器間神経ネットワーク機構研究を発展させ、血糖上昇予知・準備メカニズムという新しい概念における神経ならではの役割を明 らかとし、多臓器生物における糖代謝の真の正常状態を維持する仕組みを解明することを目的として、研究を進めている。本年度は実施計画に基づき、下記の成果をあげた。(1)前年度に作製したcholinergic neuron活性を選択的に制御できるマウスの腹腔内、特に、膵周囲に光ファイバーを留置し、迷走神経に作用させる。465nmの青色LED光源を接続した種々の光ファイバーを挿入し、青色光照射条件 (強度,期間など)の検討などを進め、効率よく、膵迷走神経を刺激あるいは抑制できる条件を検討した。その結果、迷走神経を活性化することで、膵β細胞からのインスリン分泌や膵β細胞の増殖に大きな影響を与えることを見出した。さらに、fiber-lessのオプトジェネティクスによる系の立ち上げを進めている。(2)前年度に作製した生きた状態で経時的に膵β細胞の増殖をモニターするマウスを用い、肝へのMEKアデノウィルス導入による膵迷走神経活性化状態における膵β細胞の増殖を経時的にモニターすることに成功した。さらに生理的な膵β細胞増殖の例である妊娠時において、膵β細胞が増殖の経時的な検討にも成功した。(3)迷走神経シグナルを介した臓器間ネットワークの例として、肝での傷害後肝細胞増殖におけるこの機構の重要性を証明し、その細胞内機序を解明した。この成果は、Nature Communications誌に報告した。
1: 当初の計画以上に進展している
オプトジェネティクスの手法の開発では、fiberを用いた検討で、系の立ち上げのみならず、迷走神経のインスリン分泌における役割まで解明することができ、計画以上の進展を示した。さらに、fiber-lessの手法を開発しさらに選択的な検討が可能となる状況を作りつつあり、計画を大きく超える成果をあげている。さらに、肝での傷害後肝細胞増殖におけるこの機構の重要性を証明し、その細胞内機序を解明した(Nature Communicationsに発表)ことは、本神経シグナルを介した臓器間ネットワークの概念を大きく発展させることにつながり、これもまた、当初の計画以上の進展である。
上記のモデルマウスや先進的な手法を用い、神経シグナルによる膵β細胞の急性刺激効果および慢性刺激効果をex vivo および in vivoで解析をさらに発展させる。具体的には、fiber-lessでのオプトジェネティクスマウスを用い、膵臓に選択的な迷走神経の活性化を実現し、その効果を検証する。さらに、膵β細胞増殖モニターを行うことで、生理的な膵β細胞増殖の状況を種々の環境でかいせきする。これらにより、本研究課題の最終目的である神経シグナルが恒常性を保つために果たす役割について検討を進める。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 2件)
BMC Endocrine Disorders
巻: 19 ページ: 5-5
10.1186/s12902-018-0326-3
日本内科学会雑誌
巻: 108 ページ: 416-421
Islet Equality
巻: 7 ページ: 16-19
Diabetes Strategy
巻: 8 ページ: 150-155
Nat Commun
巻: 9 ページ: 5300
10.1038/s41467-018-07747-0