研究課題
悪性腫瘍の薬物療法では、個々の症例によって効果が異なる。その一因は抗がん剤の腫瘍組織への送達にあると仮定し、腫瘍血流量と薬物療法の効果の関係を明らかにすることを目的とした。腫瘍血流量はO-15標識水を用いてPositron Emission Tomography (PET)で測定した。対象は非小細胞肺がんの11例である。11例中6例は腫瘍血管増殖因子阻害剤(ベバシズマブ)を併用、5例は併用なしで標準的な化学療法を施行した。化学療法開始前および終了後に腫瘍血流量を測定した。併用群では化学療法後の腫瘍血流量が低下し、かつ血流低下が大きいほど再増殖までの期間が短縮していた。非併用群では化学療法後の血流低下は認めなかった。標準的化学療法にベバシズマブを併用することにより、腫瘍血流量を正常化され予後が改善されると報告されているが(Sandler at al., N Engl J Med, 2006)、過度な血流低下は予後を悪化させることを明らかにした。腫瘍血流量の測定は、薬物療法において抗がん剤の腫瘍送達に関する重要な情報を提供すると考えられる。現在のPET検査では、O-15標識水の製造と供給に限界があるため、被験者数は一日2-3名に限られる。これを解決するために、MedTrace社と新規O-15標識水合成装置を開発した。装置は大阪大学医学部附属病院に設置され、O-15標識水の品質検査を終了し、短寿命放射性薬剤審査委員会、院内臨床研究倫理審査委員会の承認を受けた。COVID19パンデミックに伴い、新規開発装置での多数例での研究は完了できなかったが、「腫瘍血流量が化学療法の効果に影響する」という仮説は検証された。多数症例で腫瘍血流測定を可能にするO-15標識合成装置を開発し、今後の研究の基盤を作った。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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