研究課題/領域番号 |
17H01580
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
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研究分担者 |
尾島 敏康 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60448785)
勝田 将裕 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50464673)
川井 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (40398459)
岡田 健一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50407988)
清水 敦史 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (00637910)
廣野 誠子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60468288)
宮澤 基樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90549734)
北畑 裕司 和歌山県立医科大学, 医学部, その他 (00535338)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 樹状細胞 / 癌ワクチン |
研究実績の概要 |
本研究「膵癌に対するiPS細胞由来樹状細胞による革新的ペプチドワクチン療法の臨床応用」は平成29年度は主として①膵癌患者から短期間で・安定して高い抗原提示能を持つiPS-DCを誘導すること、を施行した。 申請者が行ってきたペプチドワクチン療法の問題点として、細胞療法の困難さ具体的には、樹状細胞を得る工程の難易度、担癌患者を用いた細胞療法の脆弱性、細胞機能の低下や数の減弱があげられる。平成29年度は膵癌患者から短期間で・安定して高い抗原提示能を持つiPS-DCを誘導する手法を確立した。 エピソーマルベクターpCXLE-hOCT3/4-shp53-F, pCXLE-hSK, pCXLE-hUL(Addgene)を購入し、大腸菌培養を行い、大量のベクターを取得した。本ベクターはゲノム挿入がないため高効率でのiPS樹立が可能である。実際健常人の末梢血幹細胞よりiPS細胞を本ベクターで行うと、最短で10日間での樹立が可能であった。導入したエピソーマルベクターはiPS細胞の継代によりやがて失われていくが、低頻度であるがゲノム内に挿入されていることがあり。そのためゲノムPCRによりゲノム挿入が無いことを検証する必要があり、継代のつど、ゲノムPCRを行ったが、ゲノム挿入は認めなかった。 次に私達は高効率での樹状細胞分化を試みた。これまでの5stepを用いた手法(Kitadani et al. Sci Rep 2018)を改良した。step 1でVEGF, SCF, bFGF,step 2・3ではIL-3, FL3, GM-CSF, M-CSFを添加,step 4ではGM-CSF, M-CSFにさらにIL-4を加え、最終的にTNF-alpha, LPSを添加することでDCを成熟化させるnew 5 step methodsを確立した。結果、最短で14日間での樹状細胞分化を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は膵癌患者から短期間で・安定して抗原提示能の高いiPS由来樹状細胞(iPS-DC)を誘導する手法の確立を目標に研究を行った。上述のごとく、これまでiPSの樹立に28日を要していたが、エピソーマルベクターを用いることで、最短で10日間での樹立が可能となった。また樹状細胞の分化誘導にはこれまで同様に28日を要していたが、上述のごとく、new 5 step methodsを確立することで、最短で14日間での分化誘導が可能となった。以上より膵癌患者より1ヶ月でのiPS-DCを分化誘導が可能となり、生命予後の短い膵癌患者でのワクチン療法におけるiPS-DCをツールとして用いる有用性が大きく示唆された。 さらにこのnew iPS-DCは従来の手法で得られた細胞と比較して、その細胞表面マーカーならびにサイトカイン産生能は同等であった。また遊走能やケモカインの発現も同等であり、ワクチンツールとして期待できる細胞であった。 現在 膵癌患者よりin vitroでのCTL誘導能検討中である。上記のごとく、ほぼ予定通り研究は進んでおり、おおむね順調に進展していると自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は膵癌患者より誘導したiPS-DCがin vitroでCTLを誘導できるか否かを検討する。まずは、膵癌切除組織に目的とする抗原が発現しているかをflow cytometryで検討する。一般的な免疫療法のターゲットとなるWT-1やCEAとともに、今回われわれが独自に同定した膵癌浸潤部に特異的に発現しているmesothelinの発現も確認する。平成30年度は膵癌切除50例の組織におけるmesothelin, MUC-16, KIF20Aの抗原発現を解析する。さらに、手術を行った膵癌患者から得た癌細胞を、20%FCSでの希釈培養もしくはソフトアガー培地を使用し、コロニー形成を確認する。数回希釈培養し、膵癌細胞を株化する。免疫染色およびflow cytometryを用いて腫瘍関連抗原の発現を確認する。 KIF20A, MUC16, Mesothelin, VEGFR1, R2をエピソーマル・プラスミド法で誘導したiPS-DCにパルスし、2日間培養する。ペプチド刺激後のDCの表面マーカーの発現確認を検討する。ついで、カクテルペプチドで刺激したiPS由来DCと同一患者から採取した末梢血単核球を混合培養し、ペプチド特異的なCTLを誘導する。基礎的には、誘導したCTLを膵癌細胞株とnon-producing cell lines, 腫瘍抗原-RNA transfected TISIを対象としIFN-γ release assay(ELISA),intracellular cytokine production assayおよび細胞傷害性試験(4時間51Cr-release assay:)を行う。さらに抗CD4抗体,抗CD8抗体,抗classI抗体を用いたantibody blocking assayにてMHC拘束性およびCTLのfunctional phenotypeを解析する。
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