研究課題
Ⅰ.移植肺に潜在する慢性炎症のPET/CT による非侵襲的検出法の開発については次項に述べるように東京大学における小動物用PET/CT機器の稼働の遅れから研究の開始自体が遅れている。II.移植肺の局所慢性炎症におけるリンパ組織新生とドナー特異抗体の役割解明と治療法開発については順調に研究が進んだと考えている。①ラットBOS (LPS 投与)におけるリンパ組織新生・抗ドナー特異抗体産生の研究に関してはモデルとしては確立しており、現在論文投稿準備中である。またこれと関連して先に投稿していたマウス気管移植モデルにおけるLPSを介したTLR4経路の線維化に及ぼす影響に関する論文は、投稿・レビュー後、現在revisionの段階である。ただし、当該モデルにおける抗体産生に関しては、免疫抑制下に気道局所に炎症が起こった場合のモデルであることから、検出限界以下であった。この結果自体は臨床で遭遇するBOSの臨床像と矛盾しないが、局所での抗体産生の有無についてはさらに検討の余地がある。②臨床肺移植検体でのリンパ組織新生・ドナー特異抗体産生の研究についてはトロント大学との共同で宮本らが研究を進めている。再肺移植時に検体を採取するため、検体採取の機会が限られてはいるが、バッチ間格差をなくすため現在10症例を集積し解析を開始する段階にある。③ラット肺移植慢性拒絶モデルのマウスへの移行については合地らがすでにマウスモデルを確立しており、今後このモデルを使った抗体関連拒絶の研究を進める段階にある。また研究代表者の佐藤は引き続き肺移植の当該分野に関する講演を国内外で多く行っている。また国際心肺移植学会では、CLADの分類として佐藤らが2010年に提唱したRASが、BOSと並ぶCLADの重要なphenotypeとして認められ、正式にstatementが出される見込みである。
3: やや遅れている
「I.移植肺に潜在する慢性炎症のPET/CT による非侵襲的検出法の開発」については研究が遅れている。ラット肺移植モデルを東京大学においても作成し再現できているものの、小動物用PET/CTの稼働が遅れており、予定してたCLADモデルにおけるFDGの取り込みを検討するに至っていない。これは、数年前に東京大学でおこった放射性同位体の湧き出し事案に由来するもので、本研究の是非とは無関係に大学全体のRI研究がここ数年滞ってきた結果である。再三、小動物用PET/CTの早期稼働を求めてきたが、残念ながら当局からの許可が下りず現在に至っている。共同研究者の髙橋が2018年4月より量子科学技術研究開発機構に異動となり、こちらの施設で小動物用PET/CTを使った研究を実施できる目途がたったため、現在動物の搬送方法の検討等を含めた準備を進めており、平成30年度には進捗が期待できる。それ以外の各研究項目については、およそ計画に即した進捗がみられており、平成30年度においても引き続き研究を継続する予定である。
進捗が遅れている「I.移植肺に潜在する慢性炎症のPET/CT による非侵襲的検出法の開発」については、東京大学の小動物用PET/CTの稼働状況が問題だったが、共同研究者の髙橋が2018年4月より量子科学技術研究開発機構に異動となり、同施設で小動物用PET/CTを使った研究を実施できる目途がたったため、平成30年度前半に当該部分の研究を実施できる見込みである。研究の遅れを取り戻すため、研究人員(大学院生)の当該部分への増員を行ったことに加え、複数の実験系を並列で実施することで平成31年度中に予定した成果をあげたいと考える。II.移植肺の局所慢性炎症におけるリンパ組織新生とドナー特異抗体の役割解明と治療法開発については、ひきつづき京都大学、トロント大学との共同研究を進め、ヒトにおける局所抗体産生とその役割の解明、RASの病態に関する抗体関連拒絶ではない機序の解明を進めるとともに、動物RASモデルを用いて、早期の抗線維化薬治療の効果を検討する予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件)
J Thorac Cardiovasc Surg
巻: epub ahead of print ページ: epub
10.1016/j.jtcvs.2018.02.039
Transplantation
巻: 101 ページ: e156-e165
10.1097/TP.0000000000001665.