研究課題
卵巣明細胞癌(OCCC)は化学療法抵抗性を示し、進行再発症例はきわめて予後不良である。本研究は難治性OCCCのゲノム解析により、治療ターゲットになりうるドライバー変異を探索することを研究目的とする。これまでの研究で、再発に寄与する遺伝子変異領域の増幅(chr17q)を同定し、その領域の増幅がOCCCの細胞株で、シスプラチン耐性に寄与することを確認し、この領域の高発現が、ミトコンドリア活性と関連していることを見出した。1)卵巣明細胞癌のエクソームシークエンス解析により、遺伝子変異とコピー数変異が、細胞増殖、細胞分裂周期、クロマチンリモデリング、細胞骨格などの経路に集中していることを明らかにし報告した。2)卵巣癌の細組織分類が予後を分け、JGOG3016A1試験でドーズデンスタキサン治療がMesenchmal Transitionサブタイプ(Epithelial Mesenchymal Transition : EMT型)のProgression Free Survivalを延長することを明らかにし報告した。3)卵巣癌シンジェニックマウスモデルにおいてEMTがSNALを介して、Cxcl1、Cxcl2を分泌しmyeloid-derived suppressor cells (MDSC)のCxcr2に作用し、MDSCを腫瘍微小環境に誘導し、免疫抑制環境を生み出していることを同定した。このCxcr2を抑制するアンタゴニストはMDSC遊走を抑制し、抗腫瘍免疫を再起させることを明らかにし報告した。
2: おおむね順調に進展している
卵巣明細胞癌(OCCC)は化学療法抵抗性を示し、進行再発症例はきわめて予後不良である。本研究は難治性OCCCのゲノム解析により、治療ターゲットになりうるドライバー変異を探索することを研究目的とした。昨年度に再発に寄与する遺伝子変異領域の増幅(chr17q)を同定し、その領域の増幅がOCCCの細胞株で、シスプラチン耐性に寄与することを確認し、この領域の高発現が、ミトコンドリア活性と関連していることを見出した。癌の悪性度に関して上皮間葉転換と、免疫抑制環境などの因子が関連していることを見出した。EMTのフェノタイプと臨床病理学的因子、抗がん剤の感受性などとの関連を報告した。OCCCのゲノム解析から悪性度と関連するバイオロジーを明らかにする基礎研究、トランスレーショナルリサーチを行っている。
本年度はこのミトコンドリア活性と癌の悪性度、化学療法抵抗性との関連を明らかにする。また初年度で立ち上げたゲノム解析基盤を臨床応用に活かすため、リキッドバイオプシーを用いた臨床腫瘍ゲノム・エピゲノム解析を行う。OCCCは子宮内膜症から発癌することが知られており、リキッドバイオプシーを用いて発癌あるいは進行しやすい異常を診断することができれば、OCCC発症を推定し、予防することが可能となる。1)マウスの子宮内膜細胞からP53およびPTENをダブルノックアウトした癌化細胞株を作成し、OCCCで高頻度に増幅しているMYCを導入することでEMTや免疫抑制因子が増強するか検証する。2)卵巣明細胞癌のRNAシークエンスから遺伝子発現サブタイプ分類を行い、EMT型や免疫活性型が存在することを同定し、臨床的意義や治療標的となりうる分子経路を解明する。3)卵巣癌明細胞癌のミトコンドリア代謝に着目し、 ferroptosisによる鉄代謝による細胞死の機構が、癌化あるいは癌の悪性度にどのようにかかわっているか明らかにする。
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Nature communications
巻: Apr 27;9(1) ページ: 1685
10.1038/s41467-018-03966-7
The American Journal of Pathology.
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10.1016/j.ajpath.2017.06.012