研究課題/領域番号 |
17H01587
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小西 郁生 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (90192062)
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研究分担者 |
森 誠一 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 次世代がん研究シーズ育成プロジェクト, プロジェクトリーダー (10334814)
日笠 幸一郎 関西医科大学, 医学部, 教授 (10419583)
松村 謙臣 近畿大学, 医学部, 教授 (20452336)
村上 隆介 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (40782363)
山田 亮 京都大学, 医学研究科, 教授 (50301106)
Brown John 京都大学, 医学研究科, 講師 (90583188)
山口 建 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 内分泌代謝高血圧研究部, 研究員 (20378772)
安彦 郁 京都大学, 医学研究科, 助教 (20508246)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 卵巣明細胞癌 / トランスレーショナルリサーチ / ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
卵巣明細胞癌(OCCC)は化学療法抵抗性を示し、進行再発症例はきわめて予後不良である。本研究は難治性OCCCのゲノム解析により、治療ターゲットになりうるドライバー変異を探索することを研究目的とする。 これまで独自のデータ解析からOCCCの再発に寄与する遺伝子変異領域の増幅(chr17q21-24)を同定し、その領域の増幅がOCCCの細胞株で、シスプラチン耐性に寄与することを確認し、この領域の高発現が、ミトコンドリア活性と関連していることを見出した。このミトコンドリア活性と化学療法抵抗性との関連を明らかにするため、明細胞癌において高発現しているミトコンドリア関連分子としてPDK2を同定した。PDK2はコピー数解析で同定した再発で増幅する領域chr17q21-24に存在していた。PDK2高発現の明細胞癌細胞株をフラックスアナライザーを行うと、PDK2抑制株と比較してミトコンドリア機能が落ちており、抗がん剤耐性にも関わっていた。また卵巣明細胞癌の進行癌と初期癌のRNA sequencing解析の結果から進行例にはEpithelial mesenchymal transition (EMT)が有意に亢進していることが認められた。EMTが亢進すると鉄及び活性酸素依存性のプログラム細胞死でFerroptosis耐性に関連することが報告されており、in vitroの卵巣癌細胞株を用いた実験から、EMTが亢進していると、接着に関わる遺伝子の発現が低下しており、ferotosis耐性であることが示された。 本年度は最終年度としてJGOG(Japanese Gynecologic Oncology Group)3025試験で集積した卵巣癌腫瘍組織が現在700例集積が完了し、本研究では、それらのサンプルの中で、およそ100例の進行OCCCのRNA sequencing解析を行うことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JGOG3025試験の卵巣癌の症例集積が2019年3月で完了した。これからこの中から明細胞癌の臨床検体からRNAシークエンスを行う方向性で準備を進めている。本年度は最終年度としてJGOG(Japanese Gynecologic Oncology Group)3025試験で集積した卵巣癌腫瘍組織が現在700 例集積する目途であり本研究では、それらのサンプルの中で、およそ150例のOCCCのRNA sequencing 解析を行い、1)進行例や再発例など予後不良因子と相関する、新たな遺伝子発現プロファイルを抽出し、新たな治療ターゲットとなりうる経路・バイオマーカーを探索する、2)これらの遺伝子発現プロファイルに相関する新たな個別化治療の標的を探索することを研究目的として準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
集積されたJGOG3025試験のOCCCの腫瘍組織からtotal RNAを抽出し、高速シーケンサーによる塩基配列解析を行う。得られた塩基配列には全転写物の情報が含まれ、ここから既知のmRNA発現量の算出、融合遺伝子の検出、新規の転写産物(スプライシングバリアント、融合遺伝子、noncoding RNA(miRNA, lnRNA, circRNAなど) )の検出を行う。臨床情報(年齢、進行期、血栓症、生命予後、化学療法感受性等)から、表現型の異なるサンプル間で前述のデータを比較し、統計学的に有意な因子を抽出する。探索的研究であり、これらの因子は事前に予測はできないが、できるだけバイアスなく抽出した上で、他のコホートでも有意なものかどうかを、京都大学等のOCCCデータでvalidationを行い、さらに候補を絞る。一方で、mRNA(あるいは新規の転写物も含めた)発現量データからOCCC内でのmolecular subtypeの分類を行う。これにはoutlierとなるサンプルを除いた上で、教師なしクラスタリングを行い(アルゴリズムによって異なる複数の結果が想定される)、別れた群間で発現が濃縮されたpathwayを見つけ出す方法と、あらかじめ想定されるpathwayの濃縮を指標にサンプルをカテゴライズする方法、それらを組み合わせる方法等が考えられる。その中でもっとも治療予後などの表現型に関連するmolecular subtypeを見出だす。Pathwayにはepithelial mesenchymal transition(EMT)やhomologous recombination deficiency(HRD)、ミトコンドリア活性、免疫応答や免疫抑制シグナルなどをスコア化するアルゴリズムも用いる。対応する病理組織標本を集積し、治療個別化のターゲットとなりうる標的分子を探索する。
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