研究課題
我々はEpstein-Barr ウイルス(EBV)が転移に関連するマルチカスケードを活性化して上咽頭癌の癌幹細胞形質獲得ならびに浸潤転移促進することを明らかにしてきた。その発展的延長として1)初年度に上咽頭癌組織におけるEBVゲノムを3D-PCRで解析すると相当数の高頻度変異が検出されることを明らかにしたが、今年度はさらに次世代シークエンサーを用いた上咽頭癌組織におけるミトコンドリアDNA解析から細胞自身の防御機構である内因性免疫APOBEC特異的な変異導入が早期癌の段階で多数検出されることを明らかにした。このことからミトコンドリアDNA変異が発癌ならびに癌多様性獲得に必須の現象であることを明らかにした。2)上咽頭癌組織におけるBeclin1とLC3を指標としたオートファジー評価では化学療法後にBeclin1とLC3いずれも発現が増強した。さらに上咽頭癌細胞C666-1を用いた実験ではオートファジーを活性化して化学療法に対して抵抗することが判明した。3)上咽頭癌や中咽頭癌などのウイルス関連癌と舌癌や下咽頭癌などの飲酒喫煙癌由来のがん患者由来組織癌移植モデル(PDX)を一連作製し、これまでに報告がなかった頭頸部癌におけるPDX生着の臨床的意義として、ウイルス関連がでは生着率が低いこと、悪性どの高い癌組織ほどPDX生着率が高いことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
内因性免疫に関する研究では、上咽頭癌組織におけるEBVゲノムを3D-PCRで解析すると相当数の高頻度変異が検出されること、導入された変異はAPOBEC変異シグネチャーG-to-A/C-to-T変異であること、が明らかにになり、EBV感染により誘導されたAPOBECがEBVゲノムへの変異導入と 同時に核やミトコンドリアDNAに変異を高頻度に導入することで上咽頭癌幹細胞化を促進することが示唆された。このAPOBECはEBVに変異を入れて宿主の防御に働くとともに、宿主のミトコンドリアDNAにも変異を導入する諸刃の剣として発癌初期から作用し、ミトコンドリア機能不全を誘導することでがん細胞の多様性を誘導することが当初の仮説通りであることが判明した。またオートファジー研究では化学療法によりオートファジーが活性化されること、その程度が上咽頭癌の予後とも関連すること、上咽頭癌や中咽頭癌などのウイルス関連癌と舌癌や下咽頭癌などの飲酒喫煙癌由来のがん患者由来組織癌移植モデル(PDX)を一連作製し、これまでに報告がなかった頭頸部癌におけるPDX生着の臨床的意義として悪性どの高い癌組織ほどPDX生着率が高いことが判明した。
そこで2019年度は1)オートファジーの活性化により機能不全に陥ったミトコンドリア除去を促進することで上咽頭癌の悪性形質がどこまで軽減されるかを検証する。 2)オートファジー活性化によるSPARC発現の変化、そして細胞競合能の変化をタイムラプス顕微鏡により評価することで、上咽頭癌幹細胞を正常細胞により除去するモデルの確立を目指して最適化する。 3)上咽頭癌の癌多様性を反映しモデルとしてPDXモデル作成を開始した。2019年度は、PDXマウスを用いてオートファジーの活性化に関与する薬剤イベルメクチン、オートファジーを阻害するヒドロキシクロロキンを用いて上咽頭癌についての抗腫瘍効果をとのように モデュレートするかを検討する。本研究で使用するオートファジー調整薬はすでに臨床応用されている薬剤であり実臨床へのフィードバックが期待できる。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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