研究課題
2019年度は、本研究で開発したNCC Oncopanel Pedの改良・性能検証を継続して行うとともに、臨床における稼働性・有用性を検証するため、臨床研究として本検査を実施することを目指した。まず、一部の搭載遺伝子の読み取り深度が低い問題を解消するために前年度に改良を施して作製したNCC Oncopanel Ped v1.1について、読み取り深度の均一性が向上していることを確認した。次にCTNNB1遺伝子等の遺伝子内欠失を自動検出するプログラムを、融合遺伝子検出プログラムを改良することにより開発し、解析パイプラインに組み込んだ。そして、治験治療へのエントリーを検討しているがん患者に対して遺伝子プロファイリング検査を実施している、国立がん研究センター中央病院の前向き臨床研究TOP-GEARにて改良版NCC Oncopanel Ped検査の運用を2019年10月より開始し、2020年3月末現在、小児がん患者11例の検査を実施した。一方、NCC Oncopanel Ped v1を用いた新規治療標的の探索として、JN-H-11試験に登録された神経芽腫49例のパネル解析を行った。28症例について先行して解析を進め、変異アノテーション解析から典型的な高リスクマーカーのMYCN増幅に加え、CCND1やCDK4の増幅、CDKN2A/2Bのホモ欠失などの細胞周期制御関連遺伝子群のコピー数異常、チロシンキナーゼ群の変異等が複数例に検出された。これらの結果では3例が3学会合同エビデンスレベル3A以上であった。更に、特に悪性度の高い高年齢発症で遠隔転移のある神経芽腫症例の発がんと悪性化に関与するテロメラーゼ非依存性テロメア異常を1.テロメア長qPCR測定、2.qPCRによるC-circleアッセイ法の方法で見出している(未発表データ)。既に139検体中15例の異常を神経芽腫検体において見出した。
2: おおむね順調に進展している
本研究班内外で小児固形腫瘍におけるパネル検査のあり方について幅広く議論を行うとともに、JCCG固形腫瘍分科会の各疾患委員会からの提案も受け、小児固形腫瘍の治療選択に有用な遺伝子(治療標的/予後因子となる可能性のある遺伝子と、生殖細胞系列変異が知られ治療/管理方針に影響を与える可能性の高い遺伝子)のリストアップを行い、小児固形腫瘍用パネルを作製することができた。さらに、その性能検証を経てさらに改良を加えたパネルの作成も行い、改良型パネルを用いたパネル検査を組み込んだ臨床試験の開始まで到達することができた。またパネルを用いて神経芽腫の新規分子病理学的予後因子候補を同定し検体数を増やして検証を行うことができている。これらのことから、研究は概ね順調に進んでいると考えている。
本研究班を中心とするJCCGゲノム医療ワーキングチームでの議論を経て、小児と成人では好発する疾患も異なり、既知の遺伝子異常も成人がんと異なるものが複数あることを受け、慎重に議論を繰り返す中で、小児がんには小児がんに特化したオンコパネルが不可欠であるというコンセンサスが得られた。このため、当初の研究計画と一部異なり、初年度から小児に特化した遺伝子パネルのデザインに取り組むこととなった。昨年度、具体的なパネルデザインについての議論が深められ、初年度に作成したNCCオンコパネル 小児版と並行して、診断や予後分類にも汎用性の高いDNA・RNAパネルよりなる小児がん診断パネルを試作することになった。このパネルは他の研究資金を用いてすでに試作されている。採取年度である本年度はすでに遺伝子異常がわかっている小児悪性固形腫瘍検体を用いて、NCCオンコパネル 小児版および高汎用性小児がん診断パネルの品質検証実験を行う。具体的にはに余剰検体のゲノム解析研究への利用に総括同意が得られている患者から得られた検体を用いて、神経芽腫のうちMYCN増幅、TERT rearrangementをもつ症例、横紋筋肉腫におけるキメラ遺伝子などを高い精度で検出できるかどうかを検証する。さらにこの解析より得られる未知の変異や遺伝子異常を他の検体セットを用いて検証し、新たな病理分子学的リスク分類の開発の基盤を築く。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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