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2018 年度 実績報告書

骨・腸・代謝連関による糖脂質代謝異常の予防戦略

研究課題

研究課題/領域番号 17H01595
研究機関福岡歯科大学

研究代表者

平田 雅人  福岡歯科大学, 口腔歯学部, 客員教授 (60136471)

研究分担者 竹内 弘  九州歯科大学, 歯学部, 教授 (70304813)
溝上 顕子  九州大学, 歯学研究院, 准教授 (70722487)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードオステオカルシン / インスリン / インクレチン / 糖・脂質代謝 / メタボリックシンドローム / 脂肪細胞 / エピゲノム
研究実績の概要

(1)GluOCが培養した膵臓alpha細胞様細胞に直接作用してGLP-1分泌量を修飾する機序解明を進展させた。GluOCによるGLP-1産生への変換酵素PC1/3の発現の促進や、PC1/3の内在性阻害因子Pcsk1n遺伝子の発現抑制には、転写因子Pax6の発現上昇や、成熟alpha細胞マーカーの発現低下、すなわちalpha細胞の未成熟化が関与することを示唆する結果を得た。
(2)GluOCによって脂肪細胞にnecroptosisが誘導される分子メカニズムを検討した。GluOCによるcAMPの産生とPKAの活性化→核内PKA触媒サブユニットによるSIK2の不活化とヒストンアセチルトランスフェラーゼp300の活性化→転写因子FoxO1とFasLの発現亢進→Fasシグナルの活性化→脂肪細胞におけるカルシウム流入・活性酸素産生・ミトコンドリア分裂→細胞死という経路であることを解明した。
(3)GluOCによる代謝改善作用はGLP-1シグナルを介することを解明した。GLP-1受容体欠損マウスではGluOC刺激により糖新生酵素の発現を調節する転写因子FoxO1およびコアクチベーターであるPGC1alphaの発現が上昇し、糖新生が増強するが、GLP-1シグナルがそれらを抑制し、生体内でバランスをとっていることが分かった。
(4)母親の妊娠中の栄養状態による仔の肝Glycogen phosphorylase(Pygl)遺伝子発現について、当該遺伝子のプロモーター領域のエピゲノム変化の検証を行い、受容体型転写因子であるAhr(Arylhydrocarbon receptor)結合領域のDNAメチル化レベルが発現制御のオン/オフを司っていることを見出した。また、マウス肝癌Hepa1c1c7細胞を用いたin vitro解析で、GluOCがリガンド非依存性のAhr経路の活性化を介したPygl発現制御をおこなっている可能性を証明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

30年度には①GluOCがalpha細胞に直接作用し、グルカゴン産生からGLP-1産生へと変換させる転写因子群の解明 ②高濃度GluOCにより脂肪細胞(3T3-L1)がnecroptosisを起こすメカニズムを分子レベルで解明 ③GluOCによる代謝改善効果はGLP-1を介した作用が優位であることをGLP-1受容体の欠損マウスを用いて解明 ④妊娠母体が摂取する栄養やGluOCが胎児肝Pygl遺伝子のメチル化を制御するメカニズムを明らかにしたことの4点について、順調に研究実績をあげていることから、概ね計画通りに研究は進展していると判断できる。
また、当初の目標にはなかったが、GluOCのマウスの自発運動に及ぼす影響について検討したところ、運動に対するモチベーションに加えて運動能力も高める作用があることが分かったことなどからも、順調に進捗していると判断できる。

今後の研究の推進方策

今後は、下記について重点的に検討する。
(1)GluOCによるalpha細胞における産生ホルモンの転換について、関与する転写因子群の発現を調節するシグナル経路を同定し、機序の全体像の解明を目指す。
(2)GluOCによる代謝改善効果において性差が生じる原因、とくにテストステロンの影響に関して解析を行う。予備的解析で最も顕著な影響が現れた脂肪組織と肝臓を中心に、テストステロン濃度を調整したマウスを作成して糖・脂質代謝関連遺伝子群の発現変化を網羅的に解析し、変調の分子基盤の解明を目指す。
(3)妊娠母体へのGluOC投与が、GluOCを直接投与していない成熟後の仔の肝Pygl発現を増強させているメカニズムについて、仔の肝GluOC発現制御にも着目しながら解析する。
(4)GluOCが運動に対するモチベーションを高めるメカニズムについて、脳内報酬系の活性化に着目しながら検討する。また、GluOCが糖代謝の亢進に関与する機構に関して、骨格筋細胞に特化したメカニズムを探る。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Osteocalcin triggers Fas/FasL-mediated necroptosis in adipocytes via activation of p3002018

    • 著者名/発表者名
      Otani, T., Matsuda, M., Mizokami, A., Kitagawa, N., Takeuchi, H., Jimi, E., Inai, T. and Hirata, M.
    • 雑誌名

      Cell Death Dis.

      巻: 9 ページ: 1194

    • DOI

      10.1038/s41419-018-1257-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Poor motor-function recovery after spinal-cord injury in anxiety-model mice with phospholipase delta related catalytically inactive protein type 1 knockout2018

    • 著者名/発表者名
      Fujita, T., Kumagai, G., Liu, X., Wada, K., Tanaka, T., Kudo, H., Asari, T., Fukutoku, T., Sasaki, A., Nitobe, Y., Nikaido, Y., Furukawa, K.-I., Hirata, M., Kanematsu, T., Ueno, S. and Ishibashi, Y
    • 雑誌名

      J. Neurotrauma

      巻: 35 ページ: 1379-1386

    • DOI

      10.1089/neu.2017.5492

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 骨による全身の糖・エネルギー代謝調節機構2018

    • 著者名/発表者名
      溝上 顕子、平田 雅人
    • 雑誌名

      FOOD Style 21

      巻: 22 ページ: 50-53

  • [学会発表] 脂肪細胞表面受容体GPRC6Aを介した脂肪蓄積機構2018

    • 著者名/発表者名
      溝上 顕子、松田 美穂、竹内 弘、安河内友世、自見英治郎、平田 雅人
    • 学会等名
      第60回歯科基礎医学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Programmed necrosis of adipocytes induced by high-dose osteocalcin2018

    • 著者名/発表者名
      Otani T, Hirata M, Mizokami A, Kitagawa N, Jimi E. and Inai T.
    • 学会等名
      The 18th World Congress of Basic and Clinical Pharmacology
  • [学会発表] PRIPによる脂肪細胞のインスリンシグナリングの調節2018

    • 著者名/発表者名
      高 靖、溝上 顕子、竹内 弘、自見 英治郎、平田 雅人
    • 学会等名
      第60回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] Uncarboxylated osteocalcin has a protective effect against UVB-induced production of reactive oxygen species in human keratinocytes2018

    • 著者名/発表者名
      向井 悟、溝上 顕子、高 靖、自見英治郎、平田 雅人
    • 学会等名
      第60回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] Protective effect by uncarboxylated osteocalcin against UVB-induced reactive oxygen species in HaCaT keratinocytes2018

    • 著者名/発表者名
      溝上 顕子、久保山奈緒、向井 悟、高 靖、自見英治郎、平田 雅人
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
  • [学会発表] A novel molecule involved in the regulation of insulin signaling mediated by internalization of insulin receptor in adipocyte2018

    • 著者名/発表者名
      高 靖、溝上 顕子、竹内 弘、自見 英治郎、平田 雅人
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
  • [学会発表] Induction of necroptosis in adipocytes by osteocalcin2018

    • 著者名/発表者名
      大谷 崇仁、溝上 顕子、北河 憲雄、松田 美穂、自見英治郎、稲井哲一朗、平田 雅人
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会

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公開日: 2019-12-27  

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