研究課題/領域番号 |
17H01598
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
前田 英史 九州大学, 歯学研究院, 教授 (10284514)
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研究分担者 |
友清 淳 九州大学, 大学病院, 講師 (20507777)
長谷川 大学 九州大学, 大学病院, 助教 (20757992)
吉田 晋一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (30778866)
濱野 さゆり 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40757978)
和田 尚久 九州大学, 大学病院, 教授 (60380466)
杉井 英樹 九州大学, 大学病院, 助教 (80802280)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 歯根膜幹細胞 / 人工歯根 / 3Dバイオプリンター |
研究実績の概要 |
ヒト皮膚由来iPS細胞を神経堤細胞様細胞へ分化誘導した細胞(iPS-NC細胞)を、ヒト初代歯根膜細胞(HPDLC)が分泌した細胞外基質上で培養した細胞(iPS-NC-PDL細胞)が、歯根膜幹細胞様細胞であることをより明らかにするために、骨芽細胞、脂肪細胞への分化能および間葉系細胞の表面抗原の発現、そして歯根膜細胞関連因子(Collagen 1, Osteoprotegerin, Periostin)の発現について比較検討した。その結果、iPS-NC-PDL細胞が、これらの幹細胞の特性と同時に歯根膜の特性も獲得していることを確認した。またiPS-NC細胞と発現因子が異なる特性を有することに関してもNestinおよびp75NTRの発現によって明確にした。 つぎに、iPS-NC細胞からiPS-NC-PDL細胞への分化誘導に重要なHPDLC由来の細胞外基質について明らかにするために、cDNAマイクロアレイ法およびCAGE法を用いて、対照として皮膚線維芽細胞のそれと比較し、発現基質を解析した。その結果、幾つかの因子が候補因子として選別された。それぞれの遺伝子発現を抑制した結果、iPS-NC-PDL細胞への分化を抑制する因子を検出することができた。現在、それぞれの因子単味による誘導能について解析を進めている。 歯根膜様チューブ形成については、予備実験として当分野で保有している不死化歯根膜幹細胞様細胞株を用いてスフェロイド形成を行い、3Dバイオプリンターを用いて作製した。チューブ内部にハイドロキシアパタイトの軸を挿入し培養した結果、界面で歯根膜細胞関連因子の1つであるPeriostinの発現が促進することが明らかになった。今後、セメント質関連因子の発現について検討を加え、iPS-NC-PDL細胞からチューブ形成を進めて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
iPS-NC-PDL細胞の分化を誘導するHPDLCの細胞外基質の同定についてやや遅れている。候補因子は検出されたが、単独での誘導能が顕著ではないため、他の候補のスクリーニングが必要である。 しかしながら、歯根膜様チューブ形成に関しては、概ね予定通りに進行しており、iPS-NC-PDL細胞のスフェロイドを用いた実験への移行の準備に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ、iPS-NC-PDL細胞を誘導する候補因子のピックアップに成功しており、今年度は、その因子の絞り込みを進める計画である。そして、同定された因子(X)を使って、ゼノフリーでのiPS-NC-PDL細胞誘導培養を推進する。さらにこの因子Xのレセプターを、標識タンパクベクター作製とこれを使った免疫沈降によって同定し、それから流れるシグナルについては、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes (KEGG) パスウェイ解析法を用いた網羅的解析へ移行する。 また、iPS-NC-PDL細胞の生体内での歯根膜形成能を解析を行うため、免疫不全マウスの背部皮下に足場材と共に移植し、骨、セメント質そして歯根膜形成について組織学的に評価する。 3Dバイオプリンターを用いて、iPS-NC-PDL細胞による歯根膜様チューブ形成に着手し、人工歯根膜としての機能性を解析する。さらにハイドロキシアパタイトからなるHAP-Rootを作製し、これを人工歯根として、この歯根膜様チューブに挿入し、実際の歯根膜の特徴と比較解析を行う。特にHAP-Root周囲におけるセメント質様形成および歯根膜様組織形成について組織学的に検討する。 以上より得られた結果は、学会および論文発表を行う予定である。
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