研究課題/領域番号 |
17H01607
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
野地 有子 千葉大学, 大学院看護学研究科, 教授 (40228325)
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研究分担者 |
小寺 さやか 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (30509617)
近藤 麻理 東邦大学, 看護学部, 教授 (70325413)
飯島 佐知子 順天堂大学, 医療看護学部, 教授 (80389890)
野崎 章子 千葉大学, 大学院看護学研究科, 講師 (90361419)
溝部 昌子 国際医療福祉大学, 福岡看護学部, 准教授 (00625684)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インバウンド医療展開 / 看護国際化ガイドライン / カルチュラル・コンピテンス / 看護管理学 / CPG(臨床ガイドライン) / 教育モジュールアプリ / 外国人患者-看護師 / 国際シンポジウム |
研究実績の概要 |
平成29年度は、キックオフ国際シンポジウムを開催し、日本医療機能評価機構の共催を得て、GRADE開発者の Holger J.Schunemann教授ほか国内外の専門家を迎え、わが国における看護国際化ガイドライン開発の組織的・理論的基盤づくりを推進した。分担研究者による5つの研究班を組織し、定期的に全体会議を持ち報告及び情報共有を行った。各研究班の成果は、1.国際シンポジウムの実施、2.教育モジュールの開発として、J-CCCHS調査票からアプリ向け辞書単語の精査、3.外国人ケアパス開発に向けた外国人インタビューの実施、4.看護国際化ガイドラインのSRでは400論文を選定し継続分析、5.臨床評価に関して日本に滞在する外国人から見た日本の病院の看護の質評価の調査を実施した。外国人患者受入れ認証病院のうち、協力の得られた17病院から、外国人35部、日本人41部を分析対象とした。質問項目はIndividualized Care Scale(ICS)の英語版及び、中国語、日本語に翻訳し使用した。回答者の平均年齢は外国人49.1歳、日本人58.2歳(P=.02)、入院中の自立度が「一人でできる」外国人31.3%、日本人70.3%(P=.00)であった。ICS合計得点は、外国人が138.1点、日本人が126.1点(P=.02)で、外国人は日本人より個別性を重視した看護を受けられたと感じていた。外国人が日本人よりICS得点の高い項目は、「患者の気分の変化に気づく」、「感情の配慮」、「以前の入院経験についての質問」、「家族のケアへの参加」、「生活への配慮」、「意見を述べられるような援助」、「十分な情報提供」等であった。ICS合計得点は、入院中の自立度(β=.31)と外国人受入れ認証(β=.50)、外国人であること(β=.45)と有意な正の関連があった(R2=.41)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的を達成するために、研究分担者をリーダーとする5つの研究班を組織して進めている。初年度の実績により、各研究班のチーム構成および研究班の横のつながりがスムースで有機的に進められている。1.国際シンポ班では、シンポジウムの開催を実施し、シンポジウムの学びからガイドラインのパネル構成についての検討を開始した。2.教育モジュールの開発では、J-CCCHS調査票からアプリ向け辞書単語の精査しており継続する。イラスト化の検討も開始しており、アプリを使った教育方法の開発を行う。3.外国人ケアパス開発に向けた外国人インタビューの実施を踏まえ、外国人だけでなく日本人へのインタビューを実施する計画書の検討を始めた。4.看護国際化ガイドラインのSRは、ターゲットとなった論文を入手したので検討および論文化を進める。5.日本に滞在する外国人から見た日本の病院の看護の質評価の調査は、臨床評価のため症例数が少ないので、参加病院の打診などさらなる工夫を検討して継続して実施することが必要である。これらに加えて、ベースラインデータとして得ている日本の看護職約7,500名のカルチュラル・コンピテンスの調査結果(J-CCCHS)の分析を継続しており、サンディエゴ大学Dr.Glaserの協力を得て潜在特性分析より3つのグループの特性のあることが明らかとなった。本研究で示された日本の看護職のカルチュラル・コンピテンスの潜在特性を基盤とした文化に配慮した安全で質の高い看護ケアの提供ができる看護職の教育および看護管理について研究を進めている。研究成果は、国内学会、国際学会での発表、国際学会での招聘口演、論文発表を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
看護国際化ガイドラインの開発と、看護職のカルチュラル・コンピテンスを2015年時点より高める目的達成にむけた今後の進捗方策は、初年度に立ち上げた研究チームとその中の5つの研究班が機能して成果をあげていることより、海外協力者を含め適宜の外部評価を得ながらチーム編成を継続する。今後は、研究協力病院及び看護系大学から協力施設を募り、倫理審査等の準備を踏まえて、実証研究を開始する。その結果を、アプリへのコンテンツ搭載、臨床看護師が使えるポケットガイドブックの作成、外国人ケアパスの電子カルテ活用等の臨床実装を推進しながら評価を行う仕組みをつくる。成果物に関する知財検討も開始する。研究代表者の所属する大学には、知財部門があり協力を得られる。本研究の目的達成のためには、看護管理者の理解および協力が必須となるため、教育者を含めた看護管理職の専門学会である日本看護管理学会において、第22回学術集会(神戸、2018)では、インフォメーション・エクスチェンジにおいて、「病院の国際化および外国人患者への質の高い看護提供を目指して-看護管理の視点から-」をエントリーした。ディスカッションポイントは、医療看護の国際化の推進のためには、カルチュラル・コンピテンスの能力開発が核となっており、申請者らの先行研究により、日本の看護師に必要なカルチュラル・コンピテンスの能力開発領域が概念化されており、看護管理の重要性が示されている。看護管理者としてのビジョンおよび自施設の具体的な対策について意見交換を行い、看護管理上の施策提言をまとめるとした。患者アウトカムを含む臨床評価を行い、GRADE開発者の Holger J. Schünemann教授のアドバイスを得ながら、国際標準にみあった看護組織に活かすガイドラインとしてとりまとめ政策提言を行う。
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