研究課題/領域番号 |
17H01617
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡崎 裕典 九州大学, 理学研究院, 准教授 (80426288)
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研究分担者 |
関 宰 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (30374648)
原田 尚美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究開発センター長代理 (70344281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 海洋循環 / 北太平洋 / 最終氷期 / 最終退氷期 |
研究実績の概要 |
2018年夏季にロシア船Multanovskiy号Mu18航海において採取した海底堆積物コア試料のうち、ベーリング海と北太平洋を結ぶ最大の海峡であるカムチャッカ海峡において採取したKST-2A-PC試料の分析に注力した。前年度末に分析した蛍光X線コアロガーデータの解析を行い、Caピークから最終退氷期の温暖期の目星を付け、浮遊性有孔虫殻を拾い出し放射性炭素年代測定を行った。その結果、KST-2A-PC試料は最終氷期最寒期以降を記録していることが示された。生物源オパール分析から生物生産変化パターンがオホーツク海型であることが明らかになった。放散虫群集から最終退氷期のベンチレーション変化が示唆された。アルケノン古水温は最終退氷期の低水温を示した。アルカン濃度は最終退氷期から完新世初期に増加し、海水準上昇に伴う陸起源有機物の供給が示唆された。陸起源脂肪酸の水素同位体比は、退氷期に軽く完新世後期に向かって重くなった。このパターンは単純に降水量変化を反映しているとは考えづらく今後の検証が必要である。Mu18航海中に採水した表層水試料中の珪藻群集分布を調べた。ベーリング海南部バウアーズ海嶺において1999年に採取されたBOW-9Aコア試料の浮遊性有孔虫および底生有孔虫の放射性炭素年代測定を1000年スケールで行い、ベンチレーション変化を復元した。その結果、両者はパラレルに変動し、一部の先行研究で見られた顕著に古い水塊の存在は指示されなかった。BOW-9Aの近傍で2009年に採取されたIODP U1341試料をリクエストし、最終氷期最寒期以降の層準について蛍光X線コアロガー分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の柱であるロシア船航海によるカムチャッカ海峡での海底堆積物試料採取を実施し、予定の分析を行っている。カムチャッカ海峡試料と比較するため、ベーリング海南部でこれまでに採取された海底堆積物試料の追加分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
カムチャッカ海峡KST-2A-PCコア試料の追加分析を行う。特に珪藻群集と放散虫群集の解析を進める。昨年度に追加試料リクエストをしたバウアーズ海嶺IODP U1341試料の珪藻群集、放散虫群集、有孔虫の安定同位体比および放射性炭素年代測定、脂肪酸の水素同位体比測定を実施し、オホーツク海型の環境変動パターンを示すカムチャッカ海峡試料と、典型的なベーリング海型の環境変動パターンを示すバウアーズ海嶺試料を比較することで、最終氷期最寒期以降のベーリング海における海洋環境変化と中深層水変化をまとめ、成果を公表する。
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