研究課題/領域番号 |
17H01623
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
野村 大成 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, 研究リーダー (90089871)
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研究分担者 |
足立 成基 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, プロジェクト研究員 (60379261)
笠井 文生 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 培養資源研究室, 特任研究員 (60393055)
梁 治子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 難治性疾患研究開発・支援センター, 研究サブリーダー (90301267)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放射線の継世代影響 / 住民と子孫の健康調査 / 放射線汚染地域 / 遺伝子変異と発現 / 疾病との相関 |
研究実績の概要 |
ロシア連邦小児放射線防護研究センター(センターと略す)が実施しているチェルノブイリ原発事故による汚染地域住民とその子ども(約97000人)の健康診断、治療データおよび野村によるマウス継世代影響研究試料を、臨床、病理学的、分子遺伝学的に調査し、放射線被ばくと未来世代における健康との相関を調査・研究した。 1. 放射線被ばくの次世代に及ぼす健康影響調査:被ばく住民およびその子孫におけるがん、先天異常、その他の疾病ついて、調査を広島・長崎との比較、未来の福島について検討し報告した(野村、研究協力者;鎌田、振律、吉田、Baleva, Sipyagina, Karakhan, Potrohova, Saphonova, Saakyan)、直接被ばくの子供に甲状腺がんが高発したのに対し、被ばく住民の子供に小児特有のがんの上昇を初めて確認できた。継世代マウス実験においても、5GyのX線を♂マウスに1回照射した2家系を調べたところ、次世代以降にがん、発生異常を好発し、マイクロサテライト変異の蓄積がみられたので、その伝搬情況を解析中である(野村、梁、足立)。7月には現地調査を実施、10月にモスクワで国際会議で発表した。 2. 分子レベルでの継世代影響調査:。被ばく住民の15家族と対象5家族のDNAを受取りマイクロサテライト解析を行ったが、親子関係が不明なため中止。高濃度汚染地域住民のDNA(セミパラチンスク-ロシア核実験場)で、親子関係の明確な被ばく群4家族14検体6組のトリオ、対照群4家族15検体7組のトリオのエキソーム解析を開始した(野村、梁、笠井)。被ばく群には、親に検出されず、子供に新規に生じた変異数は各トリオに、250前後あり解析を続けている。実施内容については、当初より当研究所の倫理委員会の承認済である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代に及ぼす健康影響調査では、汚染地域住民の子孫に、直接被ばくした子供にはみられない小児特有のがん(小児がん)の増加が初めて見られるようになったことは、大きな発見である。しかし、マウスでは継世代発がんでは、このような病態のがんは、極めて稀であり、今後の詳細な解析を要する。マウス実験においても、放射線被ばくにより誘発されたがん、発生異常等好発マウス家系に、遺伝的不安定性の指標であるマイクロサテライト変異の伝播と蓄積という大きな発見があった。 一方、住民の子供でのDNA解析では親子関係が不明であり(広島・長崎被爆者の子供でも変異を疑った約半数に親子関係がなかった)、次世代シークエンサーによる調査をせざるを得なくなった。前半の大きな成果と後半の遅れを鑑みて、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
チェルノブイリ事故被ばく住民の子孫への継世代健康影響については、ロシア側研究協力者と連携をとり臨床診断、治療を含め更なる追跡を行うとともに、継世代マウス実験において見られた放射線被ばくによるマイクロサテライト変異(遺伝的不安定性)の蓄積については、雄親マウスへのX線照射により次世代での変異誘発とがん、先天性異常、疾病の発生情況を10~56世代にわたり10家系を追跡し、変異と疾病の伝播について3年計画で実施する。 ヒト集団における被ばく子孫については、マイクロサテライト解析を行ってきたが100家族ぐらいでは有意な差が得られにくく、少数家族数で変異の検出が可能かどうかエキソームのシークエンスを開始している。高濃度汚染地域住民の家族のDNAを用い、イオンレポーターにて解析し、両親にない子供に新規に生じた変異を検出している。来年度も継続し、有効な方法であれば、再度、ロシア汚染地域住民の家族での変異の検出を実施する。
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