研究課題/領域番号 |
17H01628
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松井 敏也 筑波大学, 芸術系, 教授 (60306074)
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研究分担者 |
中川 武 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (30063770)
片山 葉子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90165415)
内田 悦生 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40185020)
大河内 博 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00241117)
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
大石 岳史 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80569509)
河崎 衣美 奈良県立橿原考古学研究所, 企画部, 技師 (60732419)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 保存科学 / 浮き彫り / バイヨン寺院 / 微生物評価 / 環境評価 |
研究実績の概要 |
5月に国内全体会議を実施し、研究体制および役割分担の確認を行った。海外調査は8月、12月、2月、3月に実施した。各調査研究領域の項目については次のような調査・研究を行った。 ①保存状態調査研究:バイヨン内廻廊(塔27-41-42付近)の内側立面、天井見上げ、床見下げ、屋根伏せの石材配列記録調査を実施した。TPS測量でスケール情報を含めた図面を作成することができた。 ②劣化メカニズム調査研究:バイヨン寺院の壁面では細菌、床面の堆積物ではアーキアが中心となって、コウモリ起源であるアンモニアの酸化反応に関与することを、酵素の遺伝情報を基に解析した。遺跡から分離した糸状菌を滅菌した砂岩へ接種した結果、半年から1年の間に明らかなくぼみの形成が確認された。着生地衣類の除去方法として試行した、湿熱処置法の経過を観測し、処置によってダメージを受けた地衣類が徐々に除去された様子を確認した。また、定点的な観察・サンプリングにより微生物動態が保存修復処理の効果の持続性評価などに利用できることが示された。バイヨン十字回廊42塔東側回廊にて壁面砂岩材の含水率を測定するとともに携帯型蛍光X線分析装置を用いて同じ地点において化学組成分析を行った。含水率は北西コーナーで高く、化学組成分析では、コウモリの排泄物による影響が大きいことが明らかになった。 ③整備影響調査研究:BY42塔室内の現状確認と石材劣化の把握、今後の保存修復対策に向けた理化学的分析のため数か所で汚染土を試料採取した。42塔室内床面は過去に床材の破壊・攪乱などが認められた。塔内のクリーニングを実施した。 ④モニタリング技術研究:浮彫の経年変化を観測するため、不整地を移動可能なインホイール4輪駆動型ローバおよびローバとセンサ間の高精度校正手法を開発し、移動型3次元レーザ計測システムの精度向上を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までの研究体制を初年度にあたる2017年度にスムーズに移行できたことが大きな要因である。年度当初のミーティングに寄って役割分担及び各領域での計画を予算内で組み直したことで、成果を十分に上げることができた。 海外調査時の現地期間の受け入れも支障がなく、各担当者が8月に現地で集い、その後、個々の研究領域の計画に従って個別に現地調査できたことも大きい。また現地スタッフによる個別調査時の引き継ぎなどもスムーズに出来たことも理由に挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の体制を維持し、5月には全体会議を国内で開催し、進捗の報告と計画を全員で確認する。カンボジア現地スタッフとも年次計画を通じて、調査許可のスムーズな取得、現地専門家らとの意見交換、ワークショップなどを行ない、適宜調査内容を上方修正するとともに、計画が着実に遂行できるようにする。 現在のところ、各調査領域での問題点は見当たらないが、当事国および日本において関連法規が毎年改正される事があるため、情報収集を念入りに実施し、法令遵守を徹底したい。
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