研究課題/領域番号 |
17H01631
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今村 文彦 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (40213243)
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研究分担者 |
サッパシー アナワット 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (00648371)
後藤 和久 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (10376543)
小岩 直人 弘前大学, 教育学部, 教授 (70296002)
原口 強 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (70372852)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 津波による地形変化 / 現地調査 / 回復過程 / 津波堆積 |
研究実績の概要 |
タイにおいては,2004年インド洋大津波によって破壊された海浜地形の修復過程および海岸地形の変化を検討した.これまで,津波で変化した海浜地形は比較的短期間で回復することが明らかにされてきたが,調査地域であるタイ南西部カオラックのパカラン岬やココカオ島では,津波襲来から13年以上経ているにもかかわらず継続的な地形変化が生じている.今年度は,パカラン岬における高精度GPSを用いた測量,海岸変化の著しい海岸の抽出,ココカオ島南部における海岸侵食の実態,現地での聞き取り調査を行った. 数値計算グループは,2017年9月にタイの調査対象地域全域の現況を把握し,数値解析を行う場所(プーケット県パートンビーチ及びパンガー県プラトン島)を決定した.また,2018年の始めには土砂移動モデルに必要な5mまで高い解像度のデータを入手し,既に所有している地形データとの合成を行った. スリランカにおいては,東海岸沿岸部の複数地点で古津波堆積物調査を実施した.多くの地点では土壌層が薄く津波堆積物が確認できなかったが,一部の放棄河川沿いで泥炭層中に砂の薄層が確認された.特にキニヤ市周辺においては津波堆積物の可能性のあるイベント層を複数確認することができた.さらに,2004年インド洋大津波による侵食地形についても調査を行い,14年を経ても地形的特徴が残ることを確認した. 日本(東北地方太平洋岸)においては,沿岸地形変化に加え,浅海底掘削により浅海域の地形がどのように変化・回復したのかを把握した.また,巨礫等の物体移動の解析により,津波規模と地形変化の関係性の評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイのパカラン岬においては,沿岸漂砂による砂嘴地形がみられるが,この砂嘴が大きく発達し,数年後には津波で侵食された面積の数倍の陸地が拡大することが予想された.また,ココカオ島南部では,津波後に年間20mの速度で海岸侵食が進行しており,それらが現地住民の居住地まで到達していること,現在,蛇篭などを用いた対策が急ピッチで進められていることを確認するなど,順調に研究が進んでいる.スリランカでの古津波堆積物調査および大津波による侵食地形調査ともに順調に進捗しており,現在までに掘削候補地点を絞り込むことができた.日本においても,津波後の地形変化を継続的に観測する目途が立った.
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今後の研究の推進方策 |
タイにおいては,砂嘴の拡大が著しいことから,これまで行ってきた高精度GPSを用いたキネマティック測量だけでは対応が難しい状況があり,ドローンによる航空写真撮影,それを用いた写真測量をタイの研究者と共同で行うため,現在その準備をしている最中である.また,ココカオ島南部においては,海底地形に関する調査,浅海域での地形変化が引き起こされている周囲の地形変化に関する調査を行う予定である.数値計算についても,地形データの整備ができたため来年度から本格的に実施を予定している.スリランカにおいては,東海岸沿岸部の古津波堆積物調査を継続し,現地で採取したサンプルの年代測定結果を踏まえ調査地点を絞って古津波イベントの解明を進める.さらに2004年インド洋大津波前後の衛星画像解析による地形変化を加味し,現地調査を踏まえ,大津津波による侵食地形の実態解明を行う.日本においては,音波探査による海底地形の回復過程を把握するとともに,陸上部における地形変遷あるいは打ち上げられた土砂等の継続観測を行う.
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