研究課題/領域番号 |
17H01641
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野町 素己 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (50513256)
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研究分担者 |
三谷 惠子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10229726)
橋本 聡 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (40198677)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カシュブ語 / 言語接触 / 歴史言語学 / ドイツ語 |
研究実績の概要 |
本年度は、6月と9月に主にカシュブ語の西部方言、南西部方言の現地調査を行った。現地の共同研究者であるグジェゴシュ・シュラムケ氏(グダンスク大学)の協力を得て30人以上の母語話者から様々な種類のデータを得ることができた。具体的には、ロレンツのテクストに基づく各方言の発話テクストの収集、文法構造に関わる質問票に基づく調査、ミクロレベルでの言語構造の違いに基づく話者の言語態度に関する情報収集を行った。またポメラニア・カシュブ文学・音楽博物館(ヴェイヘロヴォ市)の全面的な協力を得て、20世紀中ごろの珍しいカシュブ語刊行物を収集することができたのは大きな成果である。現地調査を通じて、大きな発見と考えられるのは、動詞dac (=give)を用いたいわゆる存在文の動詞の体に関する完了体の普遍性である。管見では、この言語構造はこれまでの研究で一度も分析されてこなかったうえに、使い方に一定の世代差があることも観察することができた。この発見はシカゴ大学の言語学者ヤロスラフ・ゴルバチョフ氏の専門である歴史言語学のアプローチを組み合わせ、国際学会で2回報告を行うことができた。また、これまでの研究で言及されたことがなかった動詞becおよび不定形(いわゆるabsentive)構文がカシュブ語にも存在することが現地調査の中で確認され、その構文の意味範囲、文法的特徴について、上記のシュラムケ氏と協力して質問票を作成する過程にある。なお、2020年3月および5月に現地調査を行う予定であったが、コロナウイルスのため実現できていない。 コーパス作成は、上記のシュラムケ氏に加え、母語話者でありかつカシュブ語の雑誌編集者であるボグミワ・チロツカ氏の協力を得て進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで概ね予定通りの現地調査を行い、また研究成果も計画に従って発表している。しかしながら、あてにしていた現地協力者が相次いで他界し、またコロナウイルスのため現地調査が延期され、2020年度冬期に検討されていた国際シンポジウムの準備は進められていない。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルスの問題が解決するまでは現地調査は事実上不可能であるが、スカイプやズームなどを用いて対面調査に切り替えることで、できる限り調査に努める。また国際学会への参加や研究会組織も見通せないところがあるが、これまでの資料に基づいた論文執筆に力を注ぐ。
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