研究課題/領域番号 |
17H01644
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片山 剛 大阪大学, 文学研究科, 招へい教員 (30145099)
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研究分担者 |
小林 茂 大阪大学, 文学研究科, 名誉教授 (30087150)
佐藤 廉也 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20293938)
田口 宏二朗 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50362637)
稲田 清一 甲南大学, 文学部, 教授 (60221777)
大坪 慶之 三重大学, 教育学部, 准教授 (30573290)
山本 一 立命館大学, 文学部, 講師 (00748973)
波江 彰彦 関西学院大学, 教育学部, 助教 (40573647)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 東洋史 / 地理空間情報 / 南京 / 土地制度 / 日中戦争 |
研究実績の概要 |
2018年度は、日中戦争が南京における地区別の住民構成や不動産(特に建築物)管理のあり方にどのような影響を与えたかに着目して進めた。地区としては、「日本人街」(1937年12月の日本軍による南京占領の直後に、日本人の南京への進出拠点として指定された地区)に重点をおき、主要史料として国史館所蔵の「南京登記文書」(055 「前南京市政府」)を収集し、また南京市の「市政公報」や新聞資料を参照した。そして都市のインフラとして、居住・業務の両面で重要な建築物について、日中戦争の初期(1937年8月からの南京空襲、同年12月からの南京城攻防戦、そして南京城陥落直後の時期)に損壊・焚毀したものが多いこと、その後に再建・修復されたものもあるが、大状況としては1945年夏に至るまで、復興は無論のこと、日中戦争前の状態に復旧するにも至らなかったことがほぼ判明した。また、建築物の再建・修復を含め、占領下南京の復旧・復興を担うことが最も期待された「地主、商人等の土着資本」については、空襲による被害を避けるために南京から避難したまま戻ってこなかったことも推測できる。以上は、占領下南京の実相を建築物の面から解明した成果である。 日中戦争前における不動産(土地・建物)をめぐる諸制度に関しては、南京都市部への地価税導入の実際について、史料を用いた本格的検証を進め、不動産の売買・取引に参与する仲介業者の問題を掘り起こし、また近代的首都としての南京の整備については、道路の付け替え・拡幅にともなう土地収用の問題および商業区としての統一的景観の問題などに初めて照明を当てた。また日中戦争終結直後における南京市民にとっての喫緊の問題として、私有建築物に対する公権力による「接収」について、日本で初めて分析のメスを入れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要資料である「南京土地登記文書」を収蔵する国史館は、2016年秋にその申請・閲覧の規定を大きく変更した。そのため、閲覧希望を申請してから実際に閲覧可能となるまでに6か月以上を要する場合がある。このため6月に申請した文書のうち、9月に閲覧できたものは約1割で、残りは2019年3月となった。予定していた資料を収集できなかったため、開催を予定していたワークショップは中止とすることにした。 なお2018年度における本課題の成果とりまとめに当たっては、2016年度「アジア歴史研究助成金」(公益財団法人 JFE21世紀財団)によって収集した資料も用いていることを申し添えます。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2018年度に集中的に資料を収集した「日本人街」については実現できなかった、一街路沿いの〈商店街〉の実相を描き出すことを目標の一つとする。そこで、国史館に文書が比較的多く所蔵されており、かつ繁華な街路として、新たに中華路に重点をおいて史料を収集することとする。
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