研究課題
2005年2月27日にプカプカ環礁を襲来したサイクロン・パーシーの文化人類学的調査を考古学調査と並行して実施してきた。被害の概要については聴取調査から把握できたが、生計経済を支えるサトイモ科根茎類の天水田に生じた被害と復興プロセスについて、個別具体的な情報は十分に得られていなかった。コロナ禍で現地調査が制約される状況だったため、その間を利用してマクサー・テクノロジー社の衛星画像を入手し、天水田の利用状況を解析した。雲量などの撮影条件を勘案して、3時期の画像を使用した。サイクロン・パーシー前後の2003年12月18日と2006年9月27日に撮影されたQuickBirdの画像と、2015年9月12日に撮影されたWorldView3の画像である。WV3は30×30cmの分解能をもつ高精細画像だが、2014年8月打ち上げの衛星で、それ以前は分解能60×60cmのQBデータとなる。プカプカ環礁の天水田は、ウアと呼ばれる小区画に分割される。各区画を割り当てられた栽培者は、3-4カ月ほどで成長するタロイモの根茎を収穫すると、残った葉柄をふたたび植え付けるため、収穫後は田面が露出し、収穫前の小区画とは明瞭なコントラストを呈する。QBとWV3のいずれのパンシャープン画像においても、このコントラストを視認できた。解析の結果、サイクロン・パーシー以前の2003年12月は総計で523haの利用天水田を測ったが、サイクロンから約1年半後はわずか67.3haに激減していたことが判明した。また、約10年半がたった2015年9月12日の段階でも316.2haで、2003年時の60.4%にとどまることが明らかとなった。天水田農耕を支える不被圧地下水レンズの水頭の水質や人口動態、社会組織の編成状況にかかわる情報と総合することで、天水田農耕の復興過程を解明しうる可能性が見えてきた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://web.flet.keio.ac.jp/~toru38/ty_seminar/index.html