研究課題/領域番号 |
17H01657
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研究機関 | 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所 |
研究代表者 |
青木 秀男 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50079266)
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研究分担者 |
小ヶ谷 千穂 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (00401688)
北川 由紀彦 放送大学, 教養学部, 准教授 (00601840)
森 千香子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (10410755)
石岡 丈昇 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (10515472)
大井 由紀 南山大学, 外国語学部, 准教授 (10551070) [辞退]
田巻 松雄 宇都宮大学, 国際学部, 教授 (40179883)
山口 恵子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (40344585)
松田 素二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50173852)
吉田 舞 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (50601902)
中田 英樹 成蹊大学, その他部局等, 研究員 (70551935)
中村 寛 多摩美術大学, 美術学部, 准教授 (50512737)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グローバル都市 / 都市底辺層 / 新労務 / 新貧困 / スラム / ホームレス / 難民 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は2つある。一つ、グローバル都市の底辺層の生活実態と意味世界、またその変容を分析することである。調査対象はスラム、公的施設・キャンプ、ストリートに住む貧困者・難民・ホームレスである。分析の柱は、①人口構成とその動態(移住と移民)、②労働と居住(基本的な生活条件)、③人々の意味世界(生存戦略)である。二つ、グローバル都市の底辺層の国際比較を行うことである。比較する都市は、ニューヨーク、パリ、東京、メキシコシティ、ナイロビ、マニラである。国際比較をとおして都市底辺の下位類型と全体像を構築する。これらの目的を達成するために、本年度は、一つ、底辺層分析の仮説構築に向けて、都市底辺研究の文献・資料の収集を行った。二つ、研究代表者・分担者のこれまでの調査経験を突き合わせて、分析枠組の構成とアンケート項目の決定のための議論を行った。三つ、6都市で都市底辺の人々に対する予備調査を行った。調査対象は、スラム居住者、ベンダー、難民、ホームレスである(国内先住民や海外移民を含む)。質問の柱は、人々の移動・労働・居住・生存戦略である。調査は、研究代表者と11人の分担者、5人の研究協力者で行った。四つ、都市底辺層の国際比較のための議論を行った。そのため、アンケートに基づく予備調査の結果を突き合わせた。6都市の底辺層は多様な人々であり、都市ごとに、アンケートの項目は修正と補充を必要とした。しかしおおむね、アンケート調査は、世界の都市底辺に通底する動向と、都市ごとの底辺層の個性を把握するツールとして有用であることが分かった。調査の目的は確実に達成されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的および方法に即して、一つ、仮説の構築をめぐる議論を重ねた。2017年7月9日に東京の北海道大学東京事務所で、2018 年3月27日-28日に広島の社会理論・動態研究所で全体会議を行った。2018年6月23日-24日に東京の北海道大学東京事務所で繰越金による全体会議を行った。二つ、6都市における底辺層の実態調査に向けた予備調査を行った。ニューヨークではハーレムでの調査に向けて予備的な聞き取りを行った。パリでは、外国出身者の公営団地、難民センターで聞き取りを行った。東京では、ホームレス、サービス業の女性労働者、外国人労働者に聞き取りを行った。ナイロビでは、2つのスクオッターで住民に聞き取りを行った。メキシコシティでは、スクオッターと隣接地域に住む底辺の人々に聞き取りを行った。マニラではスクオッター・再居住地域の住民および路上・公園のベンダーに聞き取りを行った。三つ、研究代表者と分担者2名で作業チームを構成し、底辺層のアンケート調査の質問項目を検討し、決定した。項目は、対象者の人口属性・労働・居住・ネットワーク・移動について、国際的に比較可能な最少限の項目に絞られた。各都市班は、アンケートを英語・スペイン語・タガログ語に翻訳して、予備調査に入った。調査対象者のサンプルは各都市50票を予定している。四つ、研究代表者の青木と分担者の石岡は、本研究の全体統括班を構成し、仮説の構築、研究の進行、現地調査の支援などの活動を行った。その一環として、本年度の繰越金により2018年度8月7日-12日にニューヨークのハーレムを訪ねた。本研究の分担者中村の案内を得て、ハーレム・ブロンスクを中心にスラム・アパートの貧困層やホームレスの参与観察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、次年度の方針として次のものを考えている。一つ、6都市の底辺層に対する調査を進める。調査は、アンケート調査とそれを面接の入り口とする聞き取り調査からなる。アンケート調査は、各都市の底辺層の態様に合わせて、質問項目の修正と補充を行う。修正と補充は、アンケート項目の不備によるものというより、そのような修正と補充により各都市の底辺層の個性を把握するという積極的な意味がある。二つ、全体会議を2度、開催する。そこではアンケート調査・聞き取り調査の経過報告を行い、6都市の底辺層の実態を突き合わせ、調査の実施をめぐる議論を行う。その議論は、6都市の底辺層の個性を把握するだけではなく、国際比較のための議論でもある。三つ、都市底辺層の国際比較に関する国際フォーラムを開催する。具体的に、アメリカの雑誌Critical Sociologyの編集長David Fasenfest氏を迎えて、広島、大阪、東京で底辺層のフィールドワークを行い、本研究の英語本刊行に向けたレクチャーを受ける。さらにDavid氏の講演(アメリカ・デトロイトの人種・労働・福祉に関する調査報告)を受け、本研究に絡んだ議論を行う。四つ、2018年7月にカナダ・トロントで開催される国際社会学会の研究大会に参加する。目的は3つある。まず、移動・ジェンダーの部会で研究分担者の小ケ谷が、本研究による調査の報告発表を行う。次に、本研究に資する研究情報の収集と、海外の研究者との交流を行い、本研究の遂行、将来の研究成果の発表のための条件づくりを行う。最後に、本研究が最終年に予定しているオランダのBrill Publisherからの研究成果の刊行に向けた打ち合わせを、同社の出版担当者およびDavid氏と行う。
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