研究課題/領域番号 |
17H01663
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
升本 順夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60222436)
|
研究分担者 |
齊藤 宏明 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (30371793)
植木 巌 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, グループリーダー代理 (60371712)
日比谷 紀之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80192714)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 白鳳丸観測航海 / 東部インド洋 / 分野横断研究 / 湧昇 / インドネシア多島海 / 水塊変性 |
研究実績の概要 |
2018年11-12月に東部インド洋にて実施する白鳳丸観測航海に向けた事前調査と海外研究機関との調整を行った。インドネシアの排他的経済水域(EEZ)内での観測が困難となったため、インドネシアEEZ外での観測のみへの計画変更を余儀なくされた。これに伴い、既存観測データや高解像度海洋モデルの結果を用いて、インドネシアEEZ外での最適な観測点配置と観測諸量の見直しを行うとともに、適切な観測手法の検討を行なった。その結果、東経88度測線のレグでは、生物・化学観測を中心とする10測点とADCP係留系の入れ替えを行い、南東部熱帯インド洋のレグでは、物理測点を16点、生物・化学観測も行う測点を10点で行うこととして、EEZ内での観測を行うオーストラリア政府との調整を進めた。 一方、観測の事前調査として、比較的簡単な生物地球化学コンポーネントを組み込んだ高解像度海洋循環モデル(OFES-NPZD)の結果を用い、湧昇時期における平均的な物理場および生物地球化学的変数の分布特性を整理した。これと並行して、観測結果を補完し、関連する変動特性を明らかにするための高解像度領域海洋モデルの開発に着手した。 また、2017年11月から2018年1月にかけて「みらい」MR17-08航海に参加し、スマトラ島の南西沖(南緯5度、東経100度)に湧昇のシグナルを捉えるための係留系を設置し、観測を開始した。 さらに、インド洋赤道域の湧昇やインドネシア多島海における水塊変成を支配する物理過程を、スーパーコンピューターによる高解像度数値シミュレーションの結果を基に議論した。その結果、風により駆動される短周期の赤道波動が平均的な赤道湧昇を励起し得ること、インドネシア通過流・東ルートの水塊変成にはハルマヘラ海海峡部などで励起された内部潮汐波の砕波による乱流混合が支配的な役割を演じていることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度における最も重要な研究活動の実施項目は、2018年に行う白鳳丸航海のための国際的な調整と観測海域における特性の事前把握であった。海外機関との調整ではインドネシアの排他的経済水域内での観測に関する厳しい制約条件から、今回は断念せざるを得なかったが、レグ3での観測の重点をインドネシア通過流域とオーストラリア沖のニンガルーニーニョ海域に移すことで対応することができた。このため、調整と事前準備に時間がかかったものの、当初予定した時期に白鳳丸での観測を行う準備が整った。 また、高解像度モデルの準備や、既存のモデル結果を用いた解析研究は順調に進んでおり、東部インド洋やインドネシア多島海域における海洋変動過程を明らかにする成果を得た。 これらのことから、おおむね順調に進展しているものと判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、2018年の白鳳丸観測航海を成功させ、現場での物理、化学、生物関連のデータやサンプルを予定通り取得することが第一となる。この観測により得られたサンプルの分析とデータの解析を通じて、東部インド洋域における物理、化学、生物過程とこれらの相互の関連性について明らかにする。特にベンガル湾内やインドネシア通過流域、ニンガルーニーニョ海域における表層循環と生物地球化学的諸量との関連についての分析および解析を進める。2018年の白鳳丸観測は11/12月であり、インドネシア近海での湧昇現象を直接捉えるものではない。そのため、今後は湧昇が活発になる北半球の夏季の観測を実現させるべく、インドネシアの研究機関、研究者らとの調整を進める。また、2020年にも白鳳丸による東部インド洋の観測航海の申請が採択されたことにより、2018年の白鳳丸観測やインドネシア船での観測結果を踏まえて、適切な観測計画を策定することを目指す。
|