研究課題/領域番号 |
17H01665
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石川 尚人 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30202964)
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研究分担者 |
東野 伸一郎 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40243901)
吉村 令慧 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50346061)
望月 伸竜 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (60422549)
加々島 慎一 山形大学, 理学部, 准教授 (70361243)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プレート拡大境界 / 海洋底拡大軸 / 磁気異常 / 磁気探査 / MT探査 / 古地磁気 / 無人小型飛行機 |
研究実績の概要 |
本研究は、大陸リフトから海洋底拡大へと現在進行しているエチオピア・アファール凹地において、近年拡大現象が起こったDabbahu Riftとその周辺域を対象に、陸上での電磁気探査、地表溶岩流の岩石学的・古地磁気学的解析、無人小型飛行機による航空磁気探査を行い、プレート拡大軸域の磁気異常の分布と構造、その形成過程を明らかにすることを目的としている。 今年度は10月22日~11月5日にエチオピアに渡航し、Dabbahu Riftの南方約40kmの地点にリフトの延長方向に直交する測線(約60km)をとり、MT探査(14地点、約6時間観測)と溶岩流からの試料採取(古地磁気解析用18地点53個、岩石学的解析用10地点22個)を行った(現地調査6日間)。MT探査から、測線中央部の地下約4km以深に熱源の存在を示唆する低比抵抗域、その両側には高比抵抗域があることがわかった。同測線で2016年に行った磁場探査のデータ解析から、測線中央部に負、その両側に正の異常がある長周期の磁気異常が確認された。以上から、測線中央部を軸とする拡大現象による上記の磁気異常の形成が示唆された。溶岩流の古地磁気学的解析から、測線東端は逆帯磁、他は正帯磁の残留磁化もち、測線中央部ほど磁化強度が強いこと、上記の磁気異常に重なる短周期の磁気異常の変動が溶岩流の磁化強度の強弱を反映していることがわかった。岩石学的解析から、溶岩流が中央海嶺玄武岩であり、測線中央部からの距離に応じ化学組成が系統的に変化することがわかった。 航空磁気探査のため、無人飛行機と磁気センサシステムの製作・調整を行った。また無人飛行機の持込・使用の許可を得るために、エチオピアの関係機関と同国の研究協力者を通じて渡航時を含め折衝し、2018年夏頃に許可が得られる見通しとなった。以上から次年度からの航空磁気探査の実施の目処がたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の調査対象地域は、プレート拡大軸域で傾動地塊が立ち並び、徒歩や車によるアクセスは困難で、今のところ地上での電磁気探査の測線を設定できたのは、プレート拡大軸とされるDabbahu Rift上ではなく、調査対象地域の南端域になる、Dabbahu Riftの南方に1測線のみである。今後の調査でDabbahu Riftを横切る測線を選定する必要がある。MT探査では、人工的なノイズが殆ど無い観測環境ではあるものの、2017年度調査時には地球磁場の擾乱が極めて弱く、観測シグナルは小さかった。また、観測時間が約6時間しか取れず、地下深部までの解析には不十分であった。 その1測線ではあるが、約60kmの長い測線で探査データが得られ、地表溶岩流からの試料採取も広範囲で実施できた。磁場探査データの解析結果からは、測線中央部に負、その両側に正の異常がある磁気異常分布を得ることができた。また、上記の通り良好ではないMT探査状況ではあったが、そのデータ解析から、地下4km以深に測線中央部には熱源の存在を示唆する低比抵抗域、その両側には高比抵抗域があることが予察的ながら明らかとなった。これにより、測線中央部を軸とするプレート拡大現象により正負の磁気異常分布が形成された可能性が示唆された。採取試料の古地磁気学的・岩石学的解析からは、磁気異常分布やプレート拡大過程に伴うマグマ進化に関係する情報が得られてきている。 航空磁気探査の関係では、現地特有の暑さ・砂塵対策は今後の課題ではあるが、無人小型飛行機と磁気センサーの製作・調整が進み、また、エチオピア関係機関との折衝の結果、現地への無人飛行機の持込・使用の許可の目処がたち、2018年度からの探査実施に向けて準備が整ってきた。 以上のことから、ほぼ順調に研究は進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、エチオピア・アジスアベンバ大学のTesfaye Kidane教授、Ameha A.Muluneh助教をエチオピア側の研究協力者とし、飛行班(研究分担者:東野・望月、研究協力者:小原・角屋・船木)と地上班(研究代表者:石川、研究分担者:吉村・加ヶ島、研究協力者:乙藤・小木曽)とに主に分かれ研究を推進する。研究体制の充実のため研究協力者として海洋磁気異常解析が専門の藤井昌和(国立極地研究所・助教)を加える。メール連絡と適宜各班での集会を持ちながら研究を進め、3月に全体での研究集会を行い、成果と計画の検討をする。 天候が安定する11~12月に16日間程度のエチオピア渡航をし、最低6日間の調査期間を設け、航空磁気探査を行う。探査予定の領域A[60kmx50km、飛行高度2000m:3領域]、領域B[40kmx15km、飛行高度1000m:2領域]、領域C[25kmx10km、飛行高度1000m:3領域]のうち、既設の電磁気探査測線を含むAの2領域、Bの2領域の探査を2018年度は優先して行う。 飛行班は、現地調査に備え、試験飛行を行いながら、無人小型飛行機と磁気探査システムの調整を進める。2018年度は無人機の使用に関してエチオピア関係機関との相談を継続し、使用許可を得る。調査後は、磁場探査データの解析、無人飛行機の整備・調整を行う。 地上班は取得探査データの解析、岩石試料の分析を進める。2018年度調査では追加の岩石試料採取と、地上での電磁気探査が可能なDabbahu Riftを直交する測線を選定するための巡検を行う。2019年度はその新規測線での磁場・MT探査を目指す。2018年度調査に無人機の使用許可が間に合わなかった場合は、既設の測線で長時間(1~2日観測)のMT探査を行い、より深い地下までの詳細な構造解析を目指す。
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