研究課題
種多様性の緯度勾配の説明として,熱帯は種分化が速いとする仮説が注目されている.しかし,なぜ熱帯は種分化が速いかに関するコンセンサスはない.申請者は,熱帯では性淘汰が強いために種分化が促進されるのではないかと考えている.本研究では,メダカ科魚類をモデルシステムに,アジア諸国から本科魚類全種を採集してその全種系統樹を作成し,温帯より熱帯に分布するグループほど性的二型が大きく,かつ種分化が速いことを検証する.また,熱帯(インドネシア)に調査定点を設置して成熟個体の季節的出現パターンも明らかにし,季節性の乏しい熱帯では実効性比が大きくオスに偏るために,性淘汰圧が強くなることの検証も行う.本年度は,現有するメダカ科魚類各種の全ゲノムシーケンスを行い,参照配列にマッピングしてリシーケンスデータを得た.これをもとに全ゲノムベースの全種系統樹を目指している.また,インドネシアのスラウェシ島南東部に分布するウォウォラエメダカ(O. woworae)を対象に,繁殖可能個体の出現パターンの調査を開始すべく,スラウェシ島南東部のムナ島のFotuno Oeに調査定点を設置した.さらに,調査開始に先だって,カンターパートのハルオレオ大学に飼育室も設置し,ストック集団の飼育設備を確立した.ストック集団として,日本からキタノメダカ(O. sakaizumii)とウォウォラエメダカの室内系統を,それぞれ雌雄40個体ずつ現地に持っていき,現在繁殖可能な状態で維持している.今後は,調査定点から月2回の頻度でランダム採集を行って雌雄20個体ずつを活かしたまま飼育室に持ち帰り,持ち帰ったメスとオスを,それぞれストック集団から選出されたオスおよびメスとペアリングし,翌朝産卵の有無を確認して,繁殖可能か否かの判定を行う予定である.
3: やや遅れている
平成29年7月に,インドネシアのカウンターパートのハルオレオ大学と共同研究同意書を締結する予定であったが,先方の学長がリコールされ,再選挙が行われることが急遽決まり,新学長が選任されるまでは同意書の締結ができない事実が判明した.調査許可申請には同意書の締結が不可欠だったため,当初の計画を遂行できなくなった.締結までに結果5ヶ月を要し,計画の遅延が生じた.
時間的な遅延以外,研究の進捗自体に問題はない.今後は,インドネシア・スラウェシ島南東部のムナ島に設置した調査定点で,ウォウォラエメダカの繁殖可能個体の出現パターンの調査を開始する.また,全ゲノムリシーケンスデータをもとにした全種系統樹の推定解析も継続すると同時に,未採集種の採集調査も行う.
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lecular Phylogenetics and Evolution
巻: 118 ページ: 194-203
10.1016/j.ympev.2017.10.005
The Biological Magazine Okinawa
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http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/~yamahira/