研究課題/領域番号 |
17H01675
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
山平 寿智 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (20322589)
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研究分担者 |
北野 潤 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (80346105)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 種分化 / 性淘汰 |
研究実績の概要 |
種多様性の緯度勾配の説明として,熱帯は種分化が速いとする仮説が注目されている.しかし,なぜ熱帯は種分化が速いかに関するコンセンサスはない.申請者は,熱帯では性淘汰が強いために種分化が促進されるのではないかと考えている.本研究では,メダカ科魚類をモデルシステムに,アジア諸国から本科魚類全種を採集してその全種系統樹を作成し,温帯より熱帯に分布するグループほど性的二型が大きく,かつ種分化が速いことを検証する.また,熱帯(インドネシア)に調査定点を設置して成熟個体の季節的出現パターンも明らかにし,季節性の乏しい熱帯では実効性比が大きくオスに偏るために,性淘汰圧が強くなることの検証も行う. 本年度は,実効性比の野外調査を行ったインドネシアのスラウェシ島南東部に分布するウォウォラエメダカ(O. woworae)を対象に,成長特性と繁殖特性の遺伝基盤を解明するための室内実験をスタートさせた.野生個体の採集は現地カウンターパートのハルオレオ大学に依頼し,スラウェシ島南東部ムナ島のFotuno Oeからオス15個体メス15個体を日本へ輸送してもらった.これらを実験室でストック集団として確立した.さらに,日本のミナミメダカを沖縄島で採集し,これらもストック集団として実験室での飼育を開始した.得られた稚魚を複数の温度段階で飼育し,実効性比の緯度勾配をもたらす繁殖投資の雌雄差の遺伝基盤の解明を目指している.また,性的二型の遺伝基盤を解明するため,スラウェシ島中部のTowuti湖に同所的に生息する2種の性的二型の程度の違いをGWASを用いて解明する試みも開始した.400個体以上の野生個体を対象に,二次性徴形質の測定とゲノムの抽出を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年9月,スラウェシ島中部で発生した地震で現地カウンターパート(パル市・タドゥラコ大学・ファドリー講師)が被災し,予定していたリンドゥ湖での採集調査がまだできていない.この遅延により,リンドゥ湖で採集予定だった種の採集が終了していない.また,コロナ渦の影響で野外採集を現地カウンターパートに依頼し,日本へと輸出してもらわざるを得ない状況にある.輸出にかかる手続き等で慢性的な実験の遅延が生じている.
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今後の研究の推進方策 |
時間的な遅延以外,研究の進捗自体に問題はない.今後は,繁殖特性や性的二型の遺伝基盤を解明するための実験を継続しながら,未採集種の取得努力も継続し全ゲノムリシーケンスデータをもとにした全種系統樹の推定解析も目指す.
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