研究課題/領域番号 |
17H01678
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒井 修亮 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (20252497)
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研究分担者 |
縄田 浩志 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (30397848)
中村 亮 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40508868)
秋道 智彌 総合地球環境学研究所, 研究部, 名誉教授 (60113429)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジュゴン / 海洋保護区 / 混獲実態 / バイオロギング / 参与観察 |
研究実績の概要 |
絶滅危惧種のジュゴンの保護と同時に、ジュゴンと同海域を利用する漁民の生活を保障することが、世界のジュゴン生息海域における重要課題である。本研究では、ジュゴンと漁民の海域利用特性を、紅海・インド洋・西太平洋の乾燥~湿潤熱帯沿岸域に広く分布するイスラム海村において比較研究する。特に、ジュゴンが漁網に入ってしまう混獲に着目し、混獲が起こりやすい海草藻場周辺における漁撈活動とジュゴンの摂餌回遊様式を明らかにする。それにより「混獲実態の解明」と、「最適な海洋保護区の設定および漁村社会への影響評価」を行い、イスラム漁村の宗教的・社会的・文化的特質に応じた海洋保護区管理の提言につなげることが本研究の目的である。タイ国、マレーシア、スーダンのイスラム漁村において、それぞれ三班(バイオロギング班、文化人類学班、影響評価班)体制で現地調査を実施した。バイオロギング班はタイ国タリボン島周辺海域でのジュゴンへのデータロガーの装着を試みたが、地元の捕獲調査への反対運動の高まりから当初の調査は行えなかった。その代り、タリボン島ではイスラム漁村での参与観察を行うために、携帯デバイスを住民に貸与することで、日々のデータをリアルタイムに収集するシステムを構築することができた。文化人類学班はスーダン・ドンゴナーブ湾での現地調査を実施し、刺し網漁場とジュゴンの混獲ホットスポットを地図上に示すことで、住民とのワークショップにおいて刺し網漁からかご漁への転換というボトムアップの混獲回避策の提起を得るに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイ国タリボン島周辺におけるジュゴンの捕獲調査については、地元住民と関係官署との関係が悪化したため、予定の調査は行うことが困難となった。そのため、潮間帯の海草も場における受動的音響観察による摂餌行動観察を実施した。また、タリボン島住民への参与観察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、バイオロギング班、文化人類学班、影響評価班の体制で現地調査を行う。調査地はスーダン、タイ、マレーシアとする。 スーダンでは2019年4月にクーデターが発生し、社会情勢の悪化が予想される。スーダンにおける調査遂行が困難な場合は、インドネシアやベトナムなど別の海域において調査を実施する。 タイではジュゴンの摂餌場利用特性に焦点をあてた行動観察を実施する。また、携帯デバイスによるWebアンケートおよび長期参与観察に基づくCVM調査を実施する。 マレーシアでは長期間の受動的音響観察を実施する。これにより、ジュゴンの行動だけでなく、主に船舶航行による人間の海域利用について情報収集する。
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