研究課題
病原微生物の感染経路および伝播様式は、感染症予防対策を立案・実施していくうえで重要な要因である。しかし、アフリカのザンビア共和国における二大河川流域の上流から下流に向かって発生する炭疽は、河川水を介した水系伝播は証明されていない。ザンビア国内で野生動物及び家畜において発生している細菌性人獣共通感染症の感染経路を探索することを目的し、感染症が発生している地域の河川水及び土壌の採取・試料中の病原体調査を行った。本年10月頃よりルワンガ川流域(チャマ地区からサウスルワンガ地域にかけて)で野生動物(カバ)の不審死が確認され始めたため、ルワンガ川のノースルワンガ地域からサウスルワンガ地域にかけて、河川水試料の採取を行った。本年度の採材では、河川水30検体(1検体 40リッター)および土壌40検体を採取した。河川試料に関しては、昨年確立した微生物濃縮法に従い河川水中の微生物を収集した。得られた検体に関して、DNA抽出を行うとともに標準PCRによって炭疽菌の有無を解析したが、本年度の水試料より炭疽菌遺伝子を検出するには至らなかった。土壌試料に関しては、ザンビア大学獣医学部の協力により解析を進め、選択培地による培養試験ならびに標準PCRによる解析を行っている。一方、昨年収集した試料解析を継続的に行った結果、次世代シークエンサーMinIONの解析結果より河川試料中に炭疽菌が存在していること、並びに腸管系ウイルスの存在を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
ザンビアの採材地に適した、水の採取方法、検体処理法、またザンビア大学内に設置されている北大ザンビア拠点における試料解析方法の検討及び確立を進め、概ね順調に成果を得ている。特に、ザンビアにおいて次世代シークエンサーMinIONを稼働させ、データの収集に成功した点は本研究の推進において非常に重要な成果である。
1. 現地調査、微生物解析、及び地理情報解析- ザンビア共和国において10月~11月に現地調査を実施する。試料採取は、アウトブレイクの 有無にかかわらず実施する。流域河川の現地調査により微生物解析データ、および地理情報解析データの収集・解析を行う。調査は、平成29年度から30年度に確立した試料調製及び解析方法に従い処理を進め、データの蓄積と解析を進める。a) 非加熱試料または加熱処理後の試料を用い、誘出液及び膜上誘出液中の微生物に対し、16SrRNA及び腸管系ウイルス遺伝子を解析する。b) 河川積算流量、水深、流域面積など対象河川流域の地理的情報解析を行う。同地点で定期的に経時的な流量、水深を測定する。さらに衛星 画像 を地理情報システム(GIS)により、流域面積、河道などの乾季期間の河川流域変化を解析する。2.病原微生物の拡散・感染モデルの構築ー これまでに収集した微生物解析、地理的情報解析データを基に、炭疽菌を指標とした河川における病原微生物の拡散モデルの構築を進める。さらに、疫学調査、既存研究の結果をあわせて、病原微生物の拡散モデルや分布、病態発症との相関を検証し、炭疽菌感染が生じる河川水中の炭 疽芽胞濃度を推定、評価する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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巻: 7 ページ: e6718
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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