研究課題/領域番号 |
17H01685
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
加藤 大智 自治医科大学, 医学部, 教授 (00346579)
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研究分担者 |
三森 龍之 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (00117384)
山本 雄一 琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (00363672)
久保 誠 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40464804)
高木 秀和 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90288522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リーシュマニア症 / シャーガス病 / ベクター / リザーバー / 分子疫学 / リスク評価 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年新たな広がりを見せる「顧みられない熱帯病」リーシュマニア症およびシャーガス病について、“感染・病態リスク評価法”を構築し、新たな視点から疫学調査を行うことを目的とする。 本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)FTAカードを用いてエクアドルおよびペルーで流行するリーシュマニア原虫の広域疫学調査を行った。 2)エクアドルおよびペルーのリーシュマニア症流行地におけるサシチョウバエ調査を行った。また、タイの新興リーシュマに症発生地域においてベクター調査を行った。 3)エクアドルおよびペルーにおけるアンデス型リーシュマニア症について、感染者の病態、保虫動物、ベクターの面から比較分析した。 4)エクアドル、ペルー、アルゼンチンの原虫検体を用いて、病態リスクファクターとなりうるリーシュマニアRNAウイルス(LRV)の感染調査を実施した。 5)5)エクアドルでシャーガス病の疫学調査を行った。調査した地域住民23人のうち2人が抗体陽性で、同地域の犬15匹中4匹が抗体陽性であった。また、その地域に分布するサシガメからTrypanosoma cruziを検出した。 6)RPA (recombinase polymerase amplification)法を用いた分子診断法について検討した。5種類の遺伝子をターゲットに条件を検討し、37℃15分の反応で試した全てのリーシュマニア原虫種の特異的な遺伝子を高感度で増幅できる系を確立できた。 7)イラク・クルド自治区におけるリーシュマニア症の原因原虫種を明らかにした。また、イヌのリーシュマニア症の感染原虫種がヒトと同じ種であることを明らかにし、この地域ではイヌがリザーバーとなっている可能性を指摘した。 8)リーシュマニア症の研究を通して確立したLAMP法を、他の感染症調査にも応用し、その有用性を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エクアドル、ペルー、アルゼンチンのリーシュマニア症の疫学調査を通して、いくつかの地域で流行する原虫種を明らかにすることができた。この中には、エクアドルで新たにアウトブレイクが起きている地域も含まれており、感染対策、感染者の治療などへの一助になると考えられた。また、エクアドル、ペルー、アルゼンチンの原虫検体を用いて、病態リスクファクターとなり得るリーシュマニアRNAウイルス(LRV)の感染調査を実施したが、現在のところLRVは検出されていない。調査地域の原虫はLRVに感染していないことが示唆される。 RPA法を用いた分子診断法について検討し、37℃15分の反応で、試した10種全てのリーシュマニア原虫の特異的遺伝子を高感度で増幅できる系を確立できた。今後はRPA法が分子診断法として実用化できるかなどについて詳細な検討を行う予定である。 イラク・クルド自治区で流行するリーシュマニア症について、研究の進め方、データ解析、論文作成について、助言・支援の依頼を受けた。この研究で、この地域の人やイヌに感染している原虫種が明らかになり、イヌがリザーバーとしてヒトへの感染源になっている可能性が示唆された。この結果は、感染症対策を考えるうえで有用な情報になる。 一方、シャーガス病の疫学調査を開始し、エクアドルにおいてシャーガス病発生リスクのある新たな地域をみつけた。この地域ではイヌがリザーバーとしてヒトへの伝播リスク因子になっていることが示唆され、ベクター対策とともに、イヌを主な対象としたリザーバー対策を行う必要があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
1)リーシュマニア症およびシャーガス病の広域疫学調査 2)疾病流行地におけるLAMP 法を用いた迅速分子診断 3)エクアドル、アルゼンチンなどから分離されたリーシュマニア原虫へのLRV感染の検出 4)PCR 法(MS-PCR)およびLAMP 法(MS-LAMP)を用いた大規模ベクター調査 5)新興リーシュマニア症の簡易血清診断法およびリザーバー調査法の確立 6)感染リスクマーカーとしてのサシチョウバエおよびサシガメの唾液抗原の発現・精製
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