研究課題
高度多剤耐性菌への最後の切札となるコリスチンに対する耐性遺伝子mcr-1が発見され、その世界的拡散が大きな脅威となっているがその全貌は不明である。本研究では、予備調査で既に市販食品の38%、健康住民の7%がコリスチン耐性遺伝子mcr-1を保有する基質特異性拡張型ベーターラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌で汚染されている事が明らかとなったベトナムにおいて、その蔓延の分子疫学的全貌を解明し、今後予想される脅威への効果的対応に資する成績を得ることを目的に研究を行った。本研究年度では、ベトナム農村部コミュニテイの飼育家畜(豚、鶏)糞便検体を解析した結果、94%の家畜がmcr-1陽性コリスチン耐性大腸菌を保有していることが判明した。当該地域住民の糞便検体解析では68%の住民がmcr-1もしくはmcr-3を保有するコリスチン耐性大腸菌が検出され、さらにその内の36%がこの伝達性耐性遺伝子mcr-1を染色体上に取り込んでいる事が判明した。ベトナムと地理的社会的背景の大きく異なるエクアドル地域コミュニテイより分離されたコリスチン耐性株の菌性状、遺伝子性状をベトナムのそれと比較解析した結果、エクアドルでは47%の家畜(豚、鶏)からコリスチン耐性遺伝子mcr-1を保有するコリスチン耐性大腸菌が検出され、検出された耐性菌の67%は3剤以上の抗菌剤に耐性を示す多剤耐性であった。検出されたコリスチン耐性遺伝子はmcr-1のみで他のコリスチン耐性遺伝子は検出されなかった。このような研究成果は、ベトナムで認められたコリスチン耐性菌蔓延はエクアドルでも罹患率は若干低いが同様の耐性遺伝子を保有する菌による蔓延が起きている事を示しており、世界規模で当該耐性菌が広がっている事が明らかとなった。
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