研究課題/領域番号 |
17H01690
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
服部 俊夫 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (30172935)
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研究分担者 |
江川 新一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (00270679)
仁木 敏朗 香川大学, 医学部, その他 (40558508)
川瀬 三雄 東北大学, 医工学研究科, 教授 (50108057)
狩野 繁之 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (60233912)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Galectin-9 / Osteopontin / デングウイルス / マラリア / エイズ / 結核 / STH-PAS |
研究実績の概要 |
今までにデング熱患者血漿中にGalectin-9(Gal-9)とOsteopontin (OPN)が上昇していることを報告してきたが、今年度は試験管内感染において、Gal-9とOPNの産生を確認した。マニラで分離したデングウイルス3型(DENV3)を、ヒト単球由来THP-1細胞に感染させた。その結果OPNの遺伝子発現と蛋白発現が促進した。ブレフェラマイドとそのメチル化化合物はDENV3感染によるOPNの誘導を用量依存的に抑制した。さらにDENV3の遺伝子発現も抑制した。これらのことはOPNがDENV3感染により誘導されることを示した。これらよりブレフェラマイドはOPNの産生を抑制することによりDENV感染によりもたらされる炎症・凝固系の異常を抑制できる可能性に加え、ウイルス産生その物を抑制することを明らかにした。さらにOPNの性状をELISAのみならず、Western blot, 蛍光顕微鏡で解析した。THP-1細胞をPMAで刺激することにより今までに認められなかった、切断型OPN(18kD)の存在を明らかにした。さらに多色の蛍光顕微鏡解析では切断された物質はN端が細胞内に、C端が細胞外に局在することも明らかにした。これらはOPNの機能の多様性が分子の多様性により規定されることを示している。 Gal-9はOPNと異なり、DENV3感染において、培養上清のGal-9とウイルス遺伝子発現は上昇するが、細胞内のGal-9は減少した。これらのことはGal-9がDanger associated molecular patternであり、緊急時に細胞から遊離する性質を持つことを示している。 またデングのSTH-PASによる遺伝子診断を、マニラのセントルークス病院と共同で行い、その製品化に向けて大きく貢献した。Gal-9と組み合わせることにより診断と重症度を同時に判定できる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はGal-9とOPNの試験管内感染における検討を行いデングウイルスによる、Gal-9とOPNの産生を確認し、またその産生様式が異なることを明らかにできた。さらに粘菌由来のブレフェラマイドとそのメチル化化合物が試験管内でOPNの誘導を抑制できたが、予想外に一部の化合物はウイルス産生その物を抑制することを明らかにした。このことにより、抗炎症作用と抗ウイルス作用を同時に持つ、抗デング剤を開発している可能性があることを明らかにできた。 さらに細胞内でOPNが、多種類の分子に切断されていることをTHP-1細胞にて初めて明らかにできた。また切断されたOPNが細胞内と外に局在することも明らかにし、細胞外に局在する切断分子がCD44分子との結合が示唆されている領域に含まれるので、OPNの最も分化した機能分子である可能性がある。これらよりバイオマーカーとしてのOPNの分子標的をさらに絞り込める可能性を示している。 Gal-9がDanger associated molecular patternとして危急時に産生される因子でることを更に明らかにできた。これらのことは全身の重症度を反映している可能性を示唆しているので、より簡便なイムノクロマト法の導入が望まれた。 またデングのSTH-PASによる遺伝子診断に関しては、マニラのセントルークス病院と共同で行うことができた。現在データーを解析中ではあるが、Real time PCRと同等の感度・特異性を有していることを明らかにでき、製品化に向けて貢献した。また陽性群のGal-9値は陰性群より有意に高く二つを、組み合わせることにより診断と重症度を同時に判定できる。 またこれらのデングウイルスの解析より得られた、データ以外に結核感染症においてもOPNのメモリーT細胞のrecruitment活性やGal-9の結核性胸水における上昇も報告できた。
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今後の研究の推進方策 |
今までのGal-9の測定結果と内外の論文を比較することにより、明らかに全長と切断型のGal-9が存在すること及び切断型が正常者でもある程度存在することが明らかになってきた。デング熱で病態マーカーとの相関を解析することにより全長型と切断型のどちらのGal-9がより病態を反映するかを明らかにする。また切断型を特異的に認識する抗体を組み合わせることにより、新たな測定系(ELISA, イムノクロマト)を作成する。 また今までに全長型で重症型と軽症型で有意差のあった、マラリア感染症の重症型で切断型と全長型を測定し、病態をどちらが反映できるかを検索する。 デングウイルスの簡易診断は抗原検査であったが、その感度に問題があった。STH-PAS法はReal time PCRに用いるような機器を必要とせずに、遺伝子診断を効率よくできるので、デングに拘わらず、チクングニヤ、ジカウイルス、日本脳炎のキットが作成されているので、その応用を進める予定である。 これらのマトリセルラー蛋白が細胞外にどのようにメッセージを伝達するかは不明な点が多い。既に予備実験において、THP-1細胞培養上清よりexosomeを分離することができている。このexosome中にOPNが存在することを認めているが、Western blotで解析すると全長型が主であり、全細胞を抗原にした解析結果と異なっている。さらに刺激細胞、感染細胞、あるいは患者血清中のexosomeの解析を進め、遊離したOPNがどのようにメッセージを伝達するかを明らかにし、exosomeがバイオーマーカーとなりうるかを明らかにする。 また既に静岡県立総合病院との共同活動として、災害感染症セミナーを毎年開催しているが、今年度も6回目の会を開催する。今回は今まで、困難であった災害時の感染症診断を容易にし、さらに災害時に同時に研究ができるシステムの構築を目指す。
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