研究課題/領域番号 |
17H01695
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 圭介 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (20334518)
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研究分担者 |
河内 亮周 三重大学, 工学研究科, 教授 (00397035)
安永 憲司 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (50510004)
小柴 健史 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60400800)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 暗号理論 / ゲーム理論 / ブロックチェーン / 暗号通貨 / プロトコル / インセンティブ / 安全性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、インセンティブの設計を様々な暗号技術 (電子署名・相手認証・ブロックチェーン技術) に拡張することである。このため、研究課題を2つ設定し、各課題に対して研究期間を大きく3つに分けている。課題(A)の既存暗号技術に対するインセンティブ設計では、合理的証明にもとづいた委託計算で利用されている報酬の技術的な設定手法を電子署名や相手認証などへ応用し、さらにその手法をその他の技術へ適用可能な形へ一般化させる。課題(B)のブロックチェーンに対するインセンティブ設計では、ブロックチェーンに対して適切にインセンティブを設定する手法を考案し、そのインセンティブの設定を、課題(A)で発展させたインセンティブの技術的設定手法で実現する。 課題(A)に対しては、今年度は2018年度までに行った第1フェーズ「インセンティブ設計技法に関する調査と研究」で得られた知見を活用し、第2フェーズ「インセンティブを用いた電子署名・相手認証のモデルと技術の設計」を行った。今年度は特に、これらの要素に密接に関わるSecure Message Transmission (SMT)と呼ばれる要素に着目し、複数ある通信路がすべての敵に支配されたとしても、合理的な敵を考える場合には、安全に通信を行うことができることを示した。 課題(B)に対しては、今年度は2018年度までに行った第1フェーズ「ブロックチェーンに関する調査と研究」で得られた知見を活用し、第2フェーズ「インセンティブを用いたブロックチェーンのモデルと技術の設計」を行った。典型的なproof-of-workにおいてはハッシュ関数の特定の要件を満たす値を出力するような入力を見つけることが行われている。これはある種の計算問題を解くことに対応しており、この問題を別の計算問題に置き換えたときのインセンティブ設計についての可能性についてに考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、課題(A)既存暗号技術に対するインセンティブ設計、および、課題(B)ブロックチェーンに対するインセンティブ設計に対して、 今年度はその第2フェーズとして、「インセンティブを用いた電子署名・相手認証のモデルと技術の設計」、「インセンティブを用いたブロックチェーンのモデルと技術の設計」をそれぞれ行った。当初はこのフェーズの研究実施による、わかりやすい研究成果をあげることを期待していたわけではなかったが、それぞれの課題において論文発表、特許出願準備等のかたちで成果をあげることができた。また、これら成果以外にも本研究実施に関して様々な要素技術に対する理解が予想以上に深まっていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
課題(A)既存暗号技術に対するインセンティブ設計では、2020年度は、2019年度までに行った第1フェーズ「インセンティブ設計技法に関する調査と研究」で得られた知見、第2フェーズ「インセンティブを用いた電子署名・相手認証のモデルと技術の設計」で得られた知見を活かして 、第3フェーズ「報酬の設定手法の一般化」を行う。ある回路に対しあるクラスの計算を行う目的の場合はこの手法で実現可能といった形で、対象と性質を一般化し、一般化した対象・性質に対する実現可能性を議論する。 課題(B)ブロックチェーンに対するインセンティブ設計では、2020年度は、2019年度までに行った第1フェーズ「ブロックチェーンに関する調査と研究」で得られた知見、第2フェーズ「インセンティブを用いたブロックチェーンのモデルと技術の設計」で得られた知見を活用し、第3フェーズ「ブロックチェーンに必要なインセンティブ設計と課題(A)の一般化報酬設定手法の関連性の明確化」を行う。これにより、分散型台帳のように暗号通貨が登場しない場面において、ブロックチェーンを維持するためのインセンティブ付与を技術的に実現することが可能となると考えられる。
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