研究課題/領域番号 |
17H01701
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松田 安昌 東北大学, 経済学研究科, 教授 (10301590)
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研究分担者 |
栗原 考次 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (20170087)
西井 龍映 長崎大学, 情報データ科学部, 教授 (40127684)
矢島 美寛 東北大学, 経済学研究科, 客員教授 (70134814)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多変量CARMAモデル / spectral density matrix / Whittle尤度 / Bayesian CARMA kriging |
研究実績の概要 |
2019年度において、CARMA確率場モデルを拡張して数理的な性質を明らかにして、実データに応用して実証分析を行った。詳細を以下に述べる。 1. 多変量CARMAモデルに拡張を行った。昨年度までに扱ってきた単変量モデルを多変量モデルに拡張し、多変量空間モデルを提案した。特に多変量変数間の関連構造を定量的にモデル化することにつながった。 2. 多変量CARMAモデルの定常条件を導出した。さらに、識別条件を明らかにした。一般に多変量空間モデルでは、識別条件は複雑になる。本研究では、関数形に制約をおくことで簡明な識別条件を同定した。 3. 多変量CARMAモデルのパラメータ推定法を考案し、漸近理論を構築した。前年度の研究で確立した単変量のWhittle尤度を最小化するパラメータ推定法を多変量に拡張することに成功した。さらに、Gauss性を仮定せずにWhittle推定量の漸近理論を構築し、推定量の良さを漸近的に明らかにした。 4. 多変量CARMAモデルによる予測法を提案した。空間データの予測はクリギングと呼ばれる。単変量で提案したBayesian CARMA krigingを多変量CARMAモデルによる多変量krigingに拡張した。 5. 多変量CARMAモデルを実データに応用し、有効性を実証した。アメリカ6000地点で観測された降雨量データと気温の2変量空間データに対して、2変量CARMAモデルを同定し、パラメータを推定して、多変量Bayesian krigingを実行して予測パフォーマンスを分析した。その結果、特に冬期におけるパフォーマンス向上が顕著に観察され、降雨量と気温の複雑な関係を有効に同定していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、CARMAモデルの多変量拡張に成功し、Whitte推定法、漸近理論、kriging法を確立した。本研究の最終目的である大規模空間データモデルの確立に向けて順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、空間データを時間とともに観測した系列、つまり空間時系列へのCARMAモデルの拡張を考える。2019年度に達成した多変量空間データへの拡張に続く次のターゲットである。そのために、標準的な時系列モデルである自己回帰移動平均(ARMA)モデルとCARMAモデルを組み合わせたアプローチを予定している。そのため、空間データを関数値をとるデータとみなし、関数データに時系列モデルを応用するという方法からスタートさせる予定である。さらに、定常条件の導出を行い、定常性の下でスペクトル密度関数を導出し、スペクトル密度関数に基づく新たなパラメータ推定法を考案する。人口、経済に関する大規模な時空間データに本空間時系列モデルを応用し、社会科学的な知見を実証分析することを目指す。
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