熱波の極値状況を精度良くとらえるための時空間モデリング手法ST-BLUEの高度化を行った。試行錯誤の結果、都心と郊外のように性質の異なる地域のモデリングを個別に行う必要があると判明したため、熱波状況の局所予測を行う手法を開発した。具体的には、極値事象を柔軟に捉えることのできる分布として知られるTukey g-and-h分布とlaGPを組み合わせることで、地理空間上の極値事象(特に熱波)を精度よくモデリングするための手法laTGHを確立した。同手法は期待二乗誤差の最小化に基づく空間予測を行う点ではST-BLUEと共通であるが、極値事象をモデリングする上で重要な歪度・尖度を平均・分散とあわせて地点ごとに推定する点でST-BLUEとは異なる。laTGHを用いて、地表面温度の背後にあるプロセスの平均(a)、分散(b)、歪度(g)、尖度(h)を地点ごとに推定した。対象地域は東京大都市圏である。都心西部において温度が高い点、海沿いや山沿いで温度分散が大きい点、都心で尖度が高まり極端な高温が局所的に発生している点、都心―熊谷―群馬に至る盆地で分布の裾が熱くなる点、などの興味深い知見が得られた。 さらに地点別の気温データ、地点別の気温データ、1kmグリッド毎の地表面温度データを組み合わせた1日毎・1kmグリッド毎の13:30の地表面温度分布を推定した。これにより都心における地表面温度の高さや、平野部における一様な温度分布といった直感に整合する結果が得られたことを確認した。また、都心付近と郊外で各パラメータの時間変化傾向が異なることが確認できた。 なお、上記の地表面温度の高度な時空間解析技術に関して、国際ワークショップを開催する他、海外共同研究者を訪問して議論を行い、その結果の取りまとめを行う予定であったが、コロナ禍のため実施できなかった。
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