研究課題/領域番号 |
17H01708
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 宏 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (20212102)
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研究分担者 |
並木 美太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10208077)
宇佐美 公良 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20365547)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 計算機システム / 不揮発メモリ |
研究実績の概要 |
まず、不揮発メモリコンピューティングの特徴である、データを退避することなく電源遮断できるために消費エネルギーが低減する手法として、消費電力の小さいsmall core と消費電力の大きいlarge coreから構成されるヘテロジニアスマルチコアが主記憶を共有するアーキテクチャの下で、応答時間に制約のある周期的な複数のアプリケーションをこれらのコアで実行する場合に、ダイナミックエネルギーとスタティックエネルギーの合計を最小化するタスクスケジューリングと電力制御アルゴリズムを提案した。その結果、従来の、アプリケーションごとに使用するコアを実行中に変更せず、時間的なスケジューリングだけは応答時間制約範囲内でまとめることで電源遮断する方法に比べ、実行時に制約を守る範囲でできるだけsmall coreを用いて電源遮断する方が約6割程度エネルギーを削減でき、これは、使用するコアを実行中に変更してもデータ退避なく電力を遮断できるという特長によるものであることが分かった。 また、評価プラットフォームとして、準パススルー型仮想マシンモニタを用いたプロセス単位の解析インターフェースの構築に着手した。提案手法の有効性を議論するためには、ファイルI/O等のシステムコールも含めてプログラムの動作を実環境とほぼ同程度に高速にモニタリングする必要があるためである。つまり、当初予定していたシミュレーションでは、システムコール以外のプログラム実行部分に関しては高い精度で評価することが可能であるが、システムコールを含めた評価が事実上できないからである。その結果、OS の環境を壊すことなくリソース監視・制御が可能な評価環境の構築ができ、このシステムを用いることでほぼ実機に近い環境で動作するアプリケーションの様々なデータを取ることができることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、システムソフトウェア、メモリアーキテクチャ、回路技術、評価プラットフォームの開発を予定していた。この中で、評価プラットフォームの構築が一番難航するであろうと予想していたが、準パススルー型仮想マシンモニタを用いたプロセス単位の解析ができる目途が立ったのは大きな進展である。また、アーキテクチャに関しては、単純なメモリアーキテクチャではあるが、システムソフトウェアの管轄であるタスクスケジューリングと組み合わせることで、不揮発メモリコンピューティングの有効性が分かったことも進展である。回路技術に関しては、対外発表に至る成果は出ていないが、この研究項目と他の研究項目は独立性が高く、本課題全体の進捗には影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、広い応用範囲での有効性を示すために、応答時間制約のある周期的なアプリケーションだけではなく、ファイルI/Oが従来は頻発するような応用に関しても、提案する不揮発メモリコンピューティングの有効性が示せるように、システムソフトウェア、アーキテクチャを中心とした検討を進めていく。
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