研究課題/領域番号 |
17H01716
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
温 暁青 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20250897)
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研究分担者 |
宮瀬 紘平 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (30452824)
Holst Stefan 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (40710322)
梶原 誠司 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (80252592)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 計算機システム / 電子デバイス・機器 / ディペンダブル・コンピューティング / シフトエラー / IR-Drop / シフトタイミング / テストクロック / グルーピング |
研究実績の概要 |
AMD社、シスウェーブ社、及び、ソニーLSIデザイン社のLSIテスト専門家を訪ね、低電力 LSI スキャンテストにおけるシフト電力問題(ホットスポット、シフトエラー)と諸要素(電源電圧、動作周波数、電源ネットワーク、クロック設計方式等)との関係について助言を受けた。それを基に、論理スイッチングの量と分布に着目したシフト電力安全性評価方式を提案した。その特徴は、複数のスキャン・チェーンまたはスキャン・セグメントがあり、一部しか動作しない場合、それによって発生する状態遷移が隣接するフリップ・フロップのスキャン・クロック・パスの近傍に与えた状態遷移の不均衡度を表現したコスト関数である。この関数で表現されたコストが高ければ、対応する隣接するフリップ・フロップにSetup TimeまたはHold Timeに関するタイミング違反が生じる可能性が高いため、シフトエラーの危険があると判定する。このコスト関数はスキャン設計方式に依存せず、高い柔軟性を有している。更に、このコスト関数はテスト入力ベクトルの内容に左右されない静的なものであり、計算にかかる時間が短いという大きな利点がある。ISCAS’89及びITC’99から大きなベンチマークのみを選び、シミュレーション実験、及び、市販のEDAツールによる遅延計算による比較評価を行った結果、提案した低電力LSI回路のスキャンテストにおけるシフト電力安全性評価方式の有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初研究計画では、ARM社(国外)とルネサスエレクトロニクス社(国内)の専門家を訪ね、低電力 LSI スキャンテストにおけるシフト電力問題と諸要素との関係について助言を受けることになっていたが、調整が遅れたため、AMD社(国外)、シスウェーブ社(国内)、及び、ソニーLSIデザイン社(国内)に調査の対象を変えた。また、当初はANSYS 社の LSI 電力解析ツールを用いて電力・遅延解析を行う予定であったが、料金が極めて高かったため、Synopsys社ツールに切り替えた。いずれの変更も影響が軽微で、総合的には、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実施結果を踏まえて、今後はシフト電力安全型スキャンテスト技術(SPS-Scan)の提案を目標に本研究を推進していく予定である。
まず、ソニーLSIデサイン社とSynTest Technologies 社の専門家から、スキャン設計フローに関する助言を受ける。次に、配線量最小のスキャンセグメント分割手法を提案し、スキャンクロック生成器とスキャンクロック分配器を設計する。それから、シフト電力安全性評価結果とレイアウトに基づく分布グラフを生成し、分布グラフの頂点被覆問題の解決による最適スキャンクロック分配手法を提案する。その後、Synopsys社の市販ツールでシミュレーション評価を行う。具体的には、研究課題2(スキャンセグメント型部分シフト可能スキャン設計)と研究課題3(最適スキャンクロック分配手法)に取り組む。研究課題2に関しては、スキャンセグメント分割に伴う配線量増加を最小化する最適分割手法を提案する。研究課題3に関しては、シフト電力安全性評価結果と回路レイアウト情報から作成されるシフト電力問題箇所とFFとの位置関係を示す分布グラフに基づいて、高い局所遷移量を持つ回路エリア、及び、不均衡なクロックパス近傍遷移量を持つ隣接FFが回路に出現しないようにする最適スキャンクロック分配手法を提案する。最適スキャンクロック分配手法の時間複雑性は分布グラフのサイズに比例して増えることが予想される。分布グラフが大きすぎる場合の対策として、分布グラフを複数の非連結部分グラフに分割し、それぞれの部分グラフで得られる部分分配結果を最終分配結果に合成することを試みる。
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