研究課題/領域番号 |
17H01728
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山岡 克式 東京工業大学, 工学院, 准教授 (90262279)
|
研究分担者 |
馬場 健一 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 教授 (60252722)
宮田 純子 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (90633909)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 非常時通信制御 / 通信品質制御 / 待ち行列理論 / セッション管理 / パケットロス |
研究実績の概要 |
非常時における緊急通話と一般通話両者の確保を実現する新しい受付制御方式を実現するために,まず,IP技術を基にしたNGN網やインターネットなどパケット網における,同時管理数が有限なSIPサーバでのセッション管理など,呼単位での制御セッション(通話)管理メカニズムを,呼単位に受付・通話時間制御が行われる回線交換としてモデル化を行い,緊急通話と通話時間に制限のある一般通話の二種類の呼が到着する状況において,一般通話到着時の収容済トラヒック状況及び制御パラメータ(閾値) に基づいて一般通話を適切に呼損とする場合(以下,即時モデル),さらに一般通話に多少の接続までの待機を許容する場合(以下,待時モデル),に関して,待ち行列理論を用いた解析を利用して,緊急通話を必要数確保しつつ一般通話の網内収容数最大化を実現する閾値を理論的に導出する. 続いて,厳密な各呼への帯域割当管理を行わないパケット網を対象として,VoIPセッションの網内収容数とパケットロスによるVoIP通話品質劣化の関係を考慮しながら,適切な網内収容数を決定する.これまでと同様に緊急通話と通話時間に制限のある一般通話の二種類の呼が存在する状況を対象に,即時・待時両モデルに関するパケットレベルでの理論解析により,両通信の呼損率に加えて,収容された両通信のパケットロス率をそれぞれ導出し,インターネットやNGN網でも効率的に運用可能な,単純な呼損率のみならず収容された各VoIPセッションへの要求パケットロス率を考慮した即時・待時両モデルに関するパケット網における適切な閾値設定法の研究開発を行う.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
非常時を対象とする本研究では,新規通話到着時に,その時点で網内に収容されている通話の総帯域(以下,収容済帯域)が制御パラメータである閾値より大きく,かつ到着呼が一般通話の場合に,これを受付拒否(呼損)とする.さらに,収容された一般通話には事前に予告する通話時間の制限を設け,網内に収容された一般通話が制限通話時間を超えた場合にはこれを強制切断する制御を提案する.従って,緊急通話の呼損率を要求値以下に抑えつつ一般通話の呼損率を最小にするには,適切な閾値の設定が必要である.これに対し,最も単純なモデルである,緊急通話一般通話ともに即時呼の場合に関して,様々なトラヒック状況に対して数値解析により閾値と呼損率の関係を求め,最適閾値の導出に既に成功している. そこで本年度は,この方式を,到着した一般通話が網内に収容不可の場合に,すぐに棄却して呼損とはせず待機状態とする待時モデルに拡張し,一般通話が待機中に網の混雑が解消した時点で網に収容することで,これまでは呼損としていた一般通話の網への収容可能性を高め,これまで同様緊急通信を必要数確保しつつ,一般通信のさらなる呼損率低減を実現した.この待時モデルでは,即時モデルと同様に定常状態を仮定し,提案方式を待ち行列理論によりM1M2/M1D2/S/S(M,ξ)でモデル化し,様々なトラヒック状況に対して数値解析により閾値と呼損率の関係を求めた.その結果,緊急呼の呼損率を悪化させることなく一般呼の呼損率改善を実現するためには,一般呼に対して極めて僅かな待時待ち行列を用意するだけで十分であることを,理論的に示した. この研究成果は,本方式を実現する上で,性能を向上させるために若干のコストしか必要としないことを示唆しており,工学上極めて重要な事実が得られたものと確信する.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究実施により,緊急通話の呼損率を要求値以下に保ちつつ,一般通話の呼損率を最小化する提案受付制御の有効性を明らかにしてきている.今後は,具体的な制御パラメータである,一般呼受付可否の閾値の,トラヒック状態に応じた決定法を確立していく. さらに,IP技術を基にしたNGN網やインターネットなど,実際のパケットネットワークで用いられる音声通話(VoIP)では,呼はパケット単位で送信されており,パケット単位で考察すると,パケット到着にばらつきが生じ,微視的に帯域が変動することに着目し,これまで検討してきた呼制御を,パケット到着間隔のばらつきによる統計多重効果を考慮することにより,回線交換モデルに比べてより一層効率的な一般呼の網収容(呼損率低減)を実現する.
|