研究課題/領域番号 |
17H01737
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
會田 雅樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (60404935)
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研究分担者 |
村田 正幸 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80200301)
高野 知佐 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (60509058)
多田 知正 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10301277)
作元 雄輔 首都大学東京, システムデザイン学部, 助教 (30598785)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネット炎上 / フラッシュクラウド / ラプラシアン行列 / 社会ネットワーク / 振動モデル / 圧縮センシング / 量子論 |
研究実績の概要 |
ネット社会の発展により,ネット上の現象が現実の社会活動に大きな影響を与えるようになってきている.特に,ネット炎上等に見られるオンラインソーシャルネットワーク上の破壊的なダイナミクスは,一部の企業や被災者への悪影響にとどまらない幅広い社会的損失を招く可能性がある.ネット炎上等について,個別事例の分析を超えた普遍的な原因の分析や,その発生メカニズムの本質的な理解には,工学的なモデル化が必要である.本研究は,ネット炎上等の発生要因を工学的にモデル化し,モデルから得られる現象の普遍的な理解に基づき対策技術の確立を目指すものである. 当該年度は,以下の実績を得た. (1)ネット炎上を説明するために,これまでの検討ではネットワーク上の振動モデルを導入してきた.これは純粋に理論的なモデルから導いたものであったが,このモデルによるとネット炎上の前兆としてネット上の活動の強さに低周波の「うなり」が生ずることが予想されることを明らかにした.また,現実のネット掲示板のログデータを用いて,低周波のうなりが観測されることを実証した. (2)これまで,ネット炎上の発生メカニズムとして,ネットワーク構造を表すラプラシアン行列の固有値が複素数となることによるモデルを考えてきたが,ラプラシアン行列の固有値が全て実数であっても,固有値が縮退した場合にネット炎上が発生しうることを明らかにした. (3)ネットを利用するユーザの振る舞いが,コンピュータの画面上に現れるメッセージによってどのように変化するのかを調べ,ネット炎上やフラッシュクラウドに至るユーザの行動を緩和するための基礎データとするため,被験者を使った実験を実施てユーザ行動の特性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネット炎上やフラッシュクラウドの原因となるユーザダイナミクスの爆発的な振る舞いを工学的に理解する目的で,最小限の道具立てによるミニマルモデルとして,幅広いユーザ間の相互作用に当てはまる普遍的なモデルを追求し,純粋に理論モデルの観点からネットワーク上の振動モデルを発展させてきた.これにより,ネット炎上などの爆発的なユーザダイナミクスの予兆を検出したり,影響を緩和するための基礎技術を得ることができた. また,爆発的なダイナミクスの予兆として出現することが理論的に予想される,ネットワークダイナミクスの強さに関する低周波のゆらぎについて,実際のネット掲示板のデータを用いて検証実験を行い,話題が盛り上がっている投稿数の多い時期に,通常の場合と比べて低周波モードが増大することを確認した.この結果は,ネットワーク上の振動モデルの妥当性を実データで検証したことになり,理論面と実データの両面から大きな進歩であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では,爆発的なユーザダイナミクスの発生防止や影響の緩和を目指し,具体的な対策技術の確立に重きを置いた検討を進める.特に,ネットワーク上の振動モデルにおける,ネット炎上の原因となるネットワーク構造の切り分けと,ダイナミクス強さを強制的に減衰させるための方策について検討する.それらの方法は.ネットワーク制御として制御しやすいポイントの切り出しや,ネットワークのメカニズムの他にユーザの心理を利用したユーザダイナミクスの緩和技術などが考えられる.
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