研究課題/領域番号 |
17H01739
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西 宏章 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00365470)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サービス構築基盤技術 / 情報サービス基盤構築技術 / スマートコミュニティ / Internet of Things |
研究実績の概要 |
SCIPにおいて、IntelQAT統合とマルチコア対応、鍵交換プロトコルを実装した。クラウドと連携し、現在行っているSSL通信における暗号カギをエッジやフォグと共有することで途中でのストリーム処理を可能とする。その時、大量のストリーム処理を、同時かつ、並列で裁くためにQATをマルチコア環境下で利用する。QATの同期モード、非同期モードについてパフォーマンス評価を行った。ソフトウエア処理に対し、同期モードではソフトウエアが1.2Gbpsに対して0.5Gbps程度となったが、非同期モードでは5.8Gbpsを達成した。さらに、処理遅延についてもソフトウエアでは1.1msであったのに対して、同期モードでは0.43ms、非同期モードでは0.7msと短縮された。次に、サービス配置において評価軸は重要である。サービス提供者はサービスプロパティとしてサービス配置の初期値としてソルトを与えるが、これには決定性および非決定性プロパティがある。決定性サービスプロパティは固定の階層へのデプロイが決定する。非決定性サービスプロパティについてSOMの入力として前処理を行いk-NNによってクラス分類を行うことで、システム修正やプロセス再配置のコスト削減を狙う。想定環境は,通信遅延・対象地域を決定的サービスプロパティ,データ通信量・24時間稼働の有無・計算量・月間アップデート回数を非決定的サービスプロパティとして評価した。結果、ラウンドロビンで配置した場合に対して、集約性を50%から70%程度向上できることから、再配置に伴うコストの低減が可能であることを示した。また、これらを評価可能な、Shuttle製ベアボーンを用いた評価用環境を構築し、運用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定において、申請書記載の年度別計画表の平成30年度計画として、(1)SC情報プラットフォーム(SCIP)の構築について、Intel QAT統合とマルチコア対応、および鍵交換プロトコル開発とIoT組込み対応、(2)SCオペレーティングシステム(SCOP)の構築について、サービスポジション、サービスマイグレーション・パイプラインの最適化、(3)実証実験について、実証実験環境構築と新たなトレース情報の入手、をあげた。以下、個々の進捗について述べる。 (1)SCIPの構築について、IntelQAT統合とマルチコア対応、および鍵交換プロトコルの開発を終え、評価を行った。また、IoT組み込みについては、ベアボーンマシンのレベルで、DPDK対応のNICを搭載していれば対応可能とした。(2)SCOPの構築におけるサービスポジション・サービスマイグレーション・パイプラインについては、自己組織化マップSOMを用いる最適化手法を提案した。(3)実証実験については、特にIoTによるスマートタウン内居住者行動に関するデータおよび位置情報を継続的に取得した。 以上の状況を勘案し、また、現時点において、特に当初想定しなかった事態も見られていないことを踏まえれば、おおむね当初目標を達成しつつあると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
申請書において次年度計画を次のように記述した。 (1)SC情報プラットフォーム(SCIP)の構築について、NetFPGAを用いたアクセラレータ実装と性能評価を行う、(2) 各種実用サービスの実装と性能評価、および処理最適化を行う、(3)SUDCMi における実証実験と本研研究課題をまとめる、である。 (1)について、NetFPGAを用い、実際に想定するスマートコミュニティ上で取得したIoTトラフィックによりルーティングテーブル情報に記載された経路へパケットを配信しつつその情報を匿名化する機構について実装、評価する。(2)について、どの中間の処理をどのようにつないで最終的に必要とする処理を達成するかは、処理負荷や遅延状況を見ながら判断する必要がある。機械学習が盛んではあるが、10msといったエッジが扱う遅延領域で機械学習を利用するのは学がない。そこで、微小遅延では微分方程式で表現された完全線形モデルである待ち行列論により求めることでエッジにある貧弱な組込プロセッサでも最適化処理を可能とする。 (3)について、開発したミドルウェアDooRを用い、実際にスマートコミュニティにおけるIoTデータ処理を想定した評価を行う。具体的には、ネットワーク配信途中での匿名化、経路付替、トランスペアレントな途中処理、データ情報コンバインである。トランスペアレントな途中処理とは、クラウド宛てのパケットを強制的に中間ノードで処理し、クラウド側の処理が矛盾しないようにパススルーしつつ、クライアント側の処理が矛盾しないようにクライアントへ送り元偽装した処理済み応答を行うとともに、遅れて到達する(と考えられる)クラウドからの返答パケットを廃棄する、一連の処理についてコンシステンシを維持した処理を提供する。 以上により、本研究課題の完成とする。なお、現時点において、特に内容の変更および問題はない。
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