研究課題/領域番号 |
17H01740
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山本 幹 関西大学, システム理工学部, 教授 (30210561)
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研究分担者 |
萬代 雅希 上智大学, 理工学部, 教授 (90377713)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ネットワーク / コンテンツ指向 / キャッシュ制御 / 輻輳制御 / ビデオ配信 / トラヒックエンジニアリング |
研究実績の概要 |
本研究では、全世界レベルで展開されているコンテンツ指向ネットワーキングの研究開発をさらに一歩実用化に近づける全く新しいアプローチとして、コンテンツ指向ネットワーク(NW)制御技術がどのようにアプリケーションと連携し、ユーザに対しアプリケーションレベルでの性能向上を提供できるかという重要な技術課題を扱う。具体的には、アプリケーションにおける時間次元での制御と、ネットワーク内の空間次元での面的制御を、エンド側ならびにNW内で連携させることで、ユーザに対しアプリケーションレベルでの性能改善を実現する新世代NW制御技術を開発する。 これまで、a) アプリケーション連携型キャッシュ、b)アプリケーション連携型輻輳制御、c) エンド側アプリケーションにおける適応レート制御、ならびにd) CON評価ツールの開発、の4つの観点で研究を進めている。今年度は、a)に対して、キャッシュ性能を大きく左右するリクエストルーチングとキャッシュ判断法について、両者が連携する新しい方式、リクエストルーチングに対する新しい手法、さらに、アプリケーションを意識したキャッシュ判断法、の開発を行った。b) に対しては、複数ソースに対応した新しいコンテンツ指向輻輳制御の開発を行い、NWを単一資源として公平利用するResource Poolingの概念を実現し理想的な資源配分を実現できていることを明らかにした。また、無線NW対応輻輳制御、ならびにホップバイホップ型輻輳制御の開発を行った。c) に対しては、アプリケーションとしてMPEG DASHを想定し、キャッシュコンテンツがユーザ体感品質(QoE)に与える影響の評価、キャッシュを考慮したABR方式の検討を行った。さらに、階層コーディングを用いた新しいABR方式の提案を行った。d)では、昨年度開発したCON評価ツールに対し、新しい提案方式を追加するなど改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要a-dで述べた通り、今年度大きく分けて4つの研究テーマに取り組んだ。 (a) キャッシュ性能を左右するキャッシュ判断法、コンテンツルーチングについて検討を行った。最近のダウンロード方向ポインタを利用する新しいコンテンツルーチング方式について、無線ならびに有線環境での評価を行い、それぞれ電子情報通信学会論文誌(以下信学論)に発表した。また、この方式に適したキャッシュ判断法についてIEEE主催国際会議(以下IEEE会議)に発表した。キャッシュ判断法として、ユーザ嗜好や人気変化を考慮した新しい方式の提案(電子情報通信学会研究会)を行った。また、アプリケーションとしてIoTを取り上げ、これに適し得た新しいリクエストルーチングを提案し、IEEE会議LANMANで発表を行い、Best Paper Awardを受賞した。 (b)今年度は基本的な輻輳制御機能に関する検討を中心に行った。具体的には、複数ソースに対応した輻輳制御の新しい提案(信学論)、この方式が理想的NS資源配分であるResource Poolingを実現することを示す詳細評価(IEEE会議)を行った。また、無線NW対応輻輳制御(情報処理学会主催国際会議)、ならびにコンテンツ指向NWに適したホップバイホップ型輻輳制御(信学論)の開発を行った。 (c)アプリケーションとしてMPEG DASHを想定し、キャッシュがユーザ体感品質(QoE)に与える影響評価(電子情報通信学会研究会)、キャッシュを考慮した新しいABR方式の検討、さらに階層コーディングを用いた際の新しい方式の提案(IEEE会議)を行った。 (d)各提案方式を組み込むなど、改良を進めた。 このように多岐に渡る課題に有機的に取り組み、多くの論文誌発表ならびに国際会議発表を行うとともに、Best Paper Awardを受賞しこの分野の研究コミュニティから高い評価を得た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間の取り組みを継続するとともに、新たな課題にも取り組み、具体的には以下の6つの課題を扱う。 1. アプリケーション連携型キャッシュ:重要アプリケーションとしてビデオ配信を考え、NW内キャッシュがエンド側ビデオ配信と連携する手法を検討する。2.アプリケーション連携型輻輳制御:アプリケーションが時間次元で対応する技術と、空間次元で動作するNW側・エンド側輻輳制御が協調的に動作する新しい方式についてさらに検討を進める。3.エンド側アプリケーションにおけるレート適応制御: MPEG DASHの伝送画像レート決定手法に関し、NW内キャッシュと連携し適切なQoEが得られる手法を検討する。4.空間次元と時間次元でのNW内制御とエンド側制御の連携技術:上記課題1-3に対し、複数ソースからのコンテンツ取得による空間次元での面的制御と、アプリケーションからの要求によるセグメント単位での時間次元での制御を組み合わせた、NW・エンド協調制御の実現を目指す。5. CON評価ツールの開発:これまで開発したツールに、これから提案する新しい方式の実装を検討する。6. 開発した提案方式の性能評価:上記課題で開発する提案方式に対し、次のシナリオで定量的に評価し、有効性を確認する。シナリオ1: キャッシュ制御の空間次元評価、シナリオ2: 輻輳制御の時間次元評価、シナリオ3: アプリケーション制御の空間次元評価、シナリオ4: 各方式における空間次元、時間次元協調動作評価、シナリオ5: 全方式の連携動作確認評価。なお、性能評価を通して得られた知見をもとに、提案方式のさらなる改良を継続的に行う予定である。また、可能であれば、無線アクセスNWによるビデオ受信を対象に、本課題を発展させたい。さらに、評価ツールに実際のMPEG画像を取り込み、ユーザ体感品質を評価できるよう検討を開始する。
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