研究課題/領域番号 |
17H01753
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
野澤 孝之 東京工業大学, 地球インクルーシブセンシング研究機構, 特任准教授 (60370110)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ハイパースキャニング / ダイナミクス / コミュニケーション / 意識 / デコーディング / 認知神経科学 / 社会神経科学 |
研究実績の概要 |
最近の研究で,申請者らは主観的な経験が脳の多次元・多時間スケールのダイナミクスに反映されることを見出した.本研究はこの知見を,近年発展している個人間脳活動同調の研究分野に適用し,個別脳領域の同調を越えた「主観的経験=多次元脳機能ダイナミクスの同調」というシステム的理解の枠組みをもたすことを狙うものである. 計画初年度のH29年度は,これまでの安静時の内的経験と多次元脳機能ダイナミクスについての研究を拡張し,(A)メディア視聴を通じたコミュニケーションへの擬似的参加時の主観的体験と,(B)実際の対話時の経験ダイナミクスが,多次元脳機能ダイナミクスで読み取れることを確立するための,以下の準備と実験を実施した. 準備として,個人を対象とする実験(A)のため,複数の脳内ネットワークをカバーする多チャネルfNIRS装置の導入と実験課題プログラム作成を行った.また対話する複数人を対象とする実験(B)のため,複数のfNIRS装置および頭部運動や眼球活動などの周辺計測で時刻を同期し,個人間多次元同調を評価するためのシステムを構築した.(A)(B)それぞれ人を対象とする研究倫理委員会の承認を得た. (A)の実験では,問題解決に向けたコミュニケーション動画を視聴してもらいながら,脳活動ダイナミクスをfNIRS装置で計測した.多次元経験サンプリングによりメディア視聴中の主観的な経験の変動をレーティングさせ,脳活動ダイナミクスとの関係を分析した.(B)の実験では,グループ創造的コミュニケーション課題時の脳活動と周辺活動を同時計測した.課題後の主観的経験の心理評価および周辺センシングデータから定量化したコミュニケーションのダイナミクスと,集団脳活動ダイナミクスとの関係を分析した. 提唱する集団主観ダイナミクスのシステム論的理解の枠組みと予備的結果について,国際ワークショップ招待講演および国内学会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個人実験計測を行った結果,当初計画のfNIRS脳計測装置では複数同時計測にプローブ拡張した際のデータ同期通信の問題で,脳ダイナミクス同調解析において精度に不足がある可能性が判明したため,カスタム版計測装置の拡張とデータ同期通信の再設計及び性能評価を行う必要が生じたことで,準備に計画していた以上の時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,(A)メディア視聴時の個人内経験ダイナミクスと(B)対話時の集団経験ダイナミクスが,多次元脳機能ダイナミクスでデコードできることを確立する研究を遂行する.頭部運動,眼球運動,コミュニケーション活動など周辺計測データの活用もさらに進め,脳機能ダイナミクスのシンクロ度合いに注目した経験ダイナミクス共有の評価の有効性を検証する.
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備考 |
第18回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2017)優秀講演賞
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