研究実績の概要 |
本研究は,物体形状の皮質中間表現を理解し,それが形成される神経メカニズムを解明することを目的とする。これを通して皮質における物体認識の形成過程を理解する。V4細胞は,単に図地分離または曲率等の局所形状を表現しているのではなく,両者を統合した物体形状の中間表現を形成しているとの仮説を検討した。自然光景を対象として,表現理解を目論んだサル電気生理実験を構成した。さらに,情報学的技法を利用して,発火の頻度とタイミングに内包される中間表現に対応する情報抽出を行った。 H30年度に導入した計算機によって神経記録解析を実施した。同時に,H29年度に導入したGPGPU計算機によって,記録した神経信号から中間形状を表現するために要する情報論的特徴を解析した。記録した神経信号から,Spike Triggered Average法,Spike Triggered Covariance法によって図地ならびに輝度コントラストに対応する最適受容野・周辺構造を算出した。この結果を基に細胞応答を再現する混合モデルを構築し,V4細胞の応答のうち図地が寄与する程度を明らかにした。また,STA, STCの解析によってV4神経細胞が実際にどのような図地に応答するのかが明らかになった。Deep Learning を利用して自然物体識別における中間表現を解析した。特に,発火の頻度とタイミングに注目して,内包される情報を解析した。V2 Border ownership 選択性細胞についてもSTA, STC 解析を実施した。これによって,V2からV4への求心性信号が明らかになり,V4における図地応答における求心性・遠心性神経機構への示唆が得られた。これらの結果から,皮質における物体表現の形成過程への理解が進んだ。
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