本研究の目的は、脳が、視覚入力から非視覚的な物体属性(物体表面・内部の物理的性質や状態)や概念的知識(物体の機能や扱い方など)についての情報へとどのように変換し、認識に利用しているのかを明らかにすることである。特に、次の仮説、「腹側高次視覚野は、「見て触れる」、「見て味わう」といった多感覚の経験を通して視覚特徴と非視覚属性(聴覚・触覚・嗅覚・味覚的物体特性)との統計的相関を学習し、非視覚的物体属性と相関する視覚特徴を抽出・表現している」に関して画像工学、実験心理学的解析、脳機能イメージングによる脳情報表現解読、および人工深層ニューラルネットワークを用いたシミュレーションにより多角的に検証する。 本年度においては、2020年度より当初の研究計画を発展させて進めている、バーチャルリアリティ環境下における多感覚的環境知覚についての検討を進展させ、新たに水中環境をVR再現した。これまで、仮想的なスキューバダイビング時の自己移動感覚や液面知覚に関する検討などを進め、学会発表を行った。また、脳機能イメージングに関しては、期間内における予定外のMRI装置の停止を受け、現有データ及び公開データベースを用いた検討を行うこととし、特に腹側高次視覚野の機能地図の詳細及び他領域とのネットワーク解析のための技術開発を進めた。
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