研究課題/領域番号 |
17H01757
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
和田 真 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究室長 (20407331)
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研究分担者 |
井手 正和 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究員 (00747991)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マウス / 身体性 / 多感覚統合 / 自閉症モデル動物 / イメージング |
研究実績の概要 |
発達障害における身体性の障害メカニズムを解明するため、マウスの身体像錯覚等を用いた行動実験、免疫組織化学やin vivo蛍光イメージング等による時空間的な側面から、自閉症モデルマウスでの変化を明らかにする。平成30年度は、行動実験、免疫組織化学を用いたc-Fosイメージングの解析とともに、in vivo蛍光イメージングのセットアップ・予備実験を進めた。 行動実験では、映像遅延装置により、行為主体感が身体所有感に及ぼす影響を調査した(H30.8 動物心理学会)。また自己身体の動きだけでなく、他者身体の動きについても、マウスの弁別能力を評価し論文発表した。マウスの歩行を表現した動画(バイオロジカルモーション)と、その配置をランダマイズした動画(スクランブル)を提示すると、マウスは、後者が提示された領域に多くとどまる。 ラバーテイル応答が生じる同期条件(WT)では、島皮質,一次体性感覚野,後部頭頂皮質では活動依存性に発現するc-Fos発現細胞が有意に多い。これに対してCaps2-KOマウス(自閉症モデル)では、後部頭頂皮質のc-Fos発現が弱いことがわかった(H31.3 FAOPS2019)。 in vivo蛍光イメージングについて、昨年度セットアップを行なった蛍光顕微鏡・冷却CCDカメラを用いて、予備実験を実施した。H30年度には、覚醒下の計測を可能にするため、防音室でのセットアップを行ない、慢性実験での手技獲得に努めた。 これまでの研究から、自閉スペクトラム症者で、身体像の錯覚が障害される原因として、多感覚統合の多様性、とりわけ固有感覚重視の傾向が示唆されている。本課題で取り組んでいるマウスの身体像錯覚でも、モデルマウスにおける後部頭頂皮質等での感覚統合の不全が示唆された。今後も比較認知的な観点からの検討を深め、発達障害における身体性の障害の機序解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
身体像錯覚に対して、1)免疫組織化学(c-Fosイメージング)により、野生型マウスでの後部頭頂皮質の関与と、自閉症モデルマウスでの活動低下が示唆された、2)映像遅延装置とディスプレイを用いた行動実験課題により、行為主体感の評価への拡張、3)in vivo蛍光イメージングのセットアップ(慢性実験の準備)などの点で研究が概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画にもとづいて研究を進める。身体意識のうち、行為主体感が身体所有感に及ぼす影響について、マウスでの特徴を明らかにし、比較認知的な検討をおこないつつ、行動実験課題の改良とin vivo蛍光イメージングのセットアップを重点的に進めることで、身体像錯覚の基盤と障害のメカニズムを明らかにする。
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