研究課題
発達障害における身体性の障害メカニズムを解明するため、マウスの身体像錯覚等を用いた行動実験、免疫組織化学やin vivo蛍光イメージング等による時空間的な側面から、自閉症モデルマウスでの違いを明らかにする。令和2年度は、自閉症モデルマウス(Shank3 KO)での行動実験を進めた。身体所有感について評価を進めるためShank3 KOマウスに対して、身体像錯覚課題を実施したところ、これまでに報告したCaps2 KOマウスと同様に、身体像錯覚が弱い可能性が示唆された(動物心理学会にて発表)。一方、本マウスについては、応答をそのものが弱い可能性も考えられ、さらに実験を進めている。一方、身体像錯覚が弱いことを報告したCaps2 KOマウスについては、神経活動に依存的に発現するc-Fosに対する免疫染色により、この応答に関わる脳領域を調査した。昨年度までに実施した実験データについてイメージング解析を進め、Caps2 KOでの反応低下には後部頭頂皮質の関与することが示唆された。以上の成果を論文にとりまとめて投稿し、採択された。一方、比較認知的観点から進めたヒト対象の研究からは、視覚・触覚の相互作用と身体像の関係を明らかにした。触覚の順序判断をしている際に、順序と逆の視覚刺激を提示すると、一定の時間差で時間順序判断が逆転する傾向があるが、身体表象が投影できる位置関係にラバーハンドを提示すると、視覚干渉の効果が大きくなる。ところが自閉スペクトラム症者ではこの効果が生じないことが明らかになった。すなわち、ヒトを対象とした研究においても、ASD者では、身体像が関連した感覚間相互作用は非定型的であることが示唆された。以上のように本研究では、発達障害のなかでもASDに着目して、その身体像の障害について、感覚間相互作用との関連を明らかにした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in Behavioral Neuroscience
巻: in press ページ: in press
10.3389/fnbeh.2021.680206
Multisensory Research
巻: 34 ページ: 129-151
10.1163/22134808-bja10033
http://www.rehab.go.jp/ri/departj/brainfunc/dds/