研究課題/領域番号 |
17H01759
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三林 浩二 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (40307236)
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研究分担者 |
荒川 貴博 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 講師 (50409637)
當麻 浩司 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (40732269)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 皮膚ガス / ガスセンサ / 疾病 / 代謝 / 高感度 |
研究実績の概要 |
本課題では、生体臭である疾病・代謝に起因する低濃度の皮膚ガス成分をリアルタイム計測する「超高感度なガスセンサシステム」を、生化学式ガスセンサの技術に「高感度光学検出系」「微量ガス濃縮装置」を組み合せることで、実現することを目標とする。研究では、生体ガスの触媒が可能な酵素を認識素子として用い、その補酵素NADHを高感度に検出するための高感度光学系を構築して、NADH蛍光検出系を作製する。次に微量ガス濃縮装置を計測流路に組み入れ、皮膚ガス成分用の超高感度なガスセンサを構築する。そして皮膚ガスフロー系を導入し、疾病・代謝由来の皮膚ガス成分を直接モニタリングし、生体臭計測による新たな診断法・代謝評価法へと発展させる。 平成30年度には、初年度に開発した生化学式ガスセンサについて、標準ガス発生装置を用いて、センサの最適化と特性評価を実施した。なお蛍光特性が少ない高分子材料を合成し、酵素固定化に用いた蛍光計測プローブの構築を行い、各種の最適化を実施した。また初年度に先行導入した微量ガス濃縮装置を生化学式ガスセンサと組み合わせ、低濃度ガス成分を測定可能な超高感度なガスセンサの開発を進めたところ、ガス発生装置の発生限界である数ppbのアセトンガスの高感度計測を確認した。そして平行して、他の生体臭成分についても、酵素を変更することで計測が可能であった。 なお高感度ガスセンサ開発の応用である皮膚アセトンガス計測について検討したところ、当初の予想に反し、他のガス成分に比してガス濃度が低く、詳しく検討する必要があり、予算の繰越の事由が発生した(平成30年12月)。そこで、GC-MSを導入(レンタル)することで、低濃度ガスの定量およびセンサ校正を行い、また酵素反応系の再検討と光学系の改良を実施したことで、sub-pptレベルのガス計測を実現し、計画を回復した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度には、初年度に開発した「生化学式ガスセンサ」について、標準ガス発生装置を用いて、センサの最適化と特性評価を実施した。なお蛍光特性が少ない酵素固定化用の高分子材料(MPC-co-EMHA)の合成を実施した。このMPC-co-EMHAで酵素触媒をH-PTFE膜に包括固定化し、その酵素膜を気液隔膜セルの隔膜として光ファイバの感応部に装着して、蛍光計測プローブとした。なお光プローブと酵素膜とのギャップ、気相セルのガス流速、液相セルの緩衝液流速、緩衝液のpH等について最適化を実施した。また初年度に先行導入した微量ガス濃縮装置について性能を評価した後、開発した「生化学式ガスセンサ」と組み合わせ、低濃度ガス成分を測定可能な「超高感度なガスセンサシステム」の開発を進めた。評価実験として、微量ガス濃縮装置を「生化学式ガスセンサ」に組み込み、半連続的にガス成分の超高感度にセンシングを行ったところ、ガス発生装置の発生限界である数ppbのアセトンガスの高感度計測を達成した。そして平行して、他の生体臭成分であるイソプロパノール、エタノール、アセトアルデヒドなどの成分についても、酵素を変更することで、選択的な計測が可能であった。 なお高感度ガスセンサ開発の応用である皮膚アセトンガス計測を検討したところ、当初の予想に反し、他のガス成分に比してガス濃度が低く、詳しく検討する必要があり、予算の繰越の事由が発生した(平成30年12月)。そこで、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC-MS)を導入(レンタル)し、低濃度ガスの定量を実施し、また酵素反応系の再検討と光学系の改良も実施したことで、sub-pptレベルのガス計測を実現し、計画を回復した(平成31年9月末:6ヶ月延長)。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度には、開発した超高感度なガスセンサシステムについて、既設の低濃度ガス発生装置を用いて、センサ特性を詳細に評価する。さらに新たに導入する「皮膚ガスフローシステム」をガスセンサに組み込み、低濃度な皮膚ガス成分の計測に適用する。実験では倫理承認に基づき、被験者からの皮膚アセトンガス計測を行い、さらに脂肪代謝による皮膚アセトンガス濃度の変化をモニタリングし、本システムの有効性を調べる。 センサ特性評価では、既設の低濃度標準ガス発生装置を用いてアセトンガスに対する応答性、検出限界感度、定量性を調べた後に、多様な揮発性成分を含む生体ガスにおいて、対象成分(アセトン)を選択的に測定することを目的とすることから、多様な皮膚ガス成分をもとに、センサのアセトンガスに対する選択性を評価する。 生体ガス計測では、超高感度なガスセンサシステムに「皮膚ガスフローシステム」を組み込み、生体臭に含まれる低濃度成分の高感度な連続計測に適用する。導入する「皮膚ガスフローシステム」は、皮膚からの発汗計測器を改良した装置で、皮膚表面に直接装着可能な容量のフローセルにて流量補償機能を備えながら、「超高感度なガスセンサ」に流路を接続することで、皮膚からのガスサンプルの計測に適用する。これにより、皮膚からの発汗を計測しながら、同時に低濃度の皮膚ガス成分のモニタリングを行う。実験では、倫理承認に基づき、基礎代謝に基づく変化を捉えるため、健常者にてアンケートを実施した後、皮膚アセトンガスの濃度計測を行う。また有酸素運動による脂肪代謝の増加にて、アセトン濃度は容易に上昇することから、これら条件のもと変動する皮膚アセトンガスの濃度モニタリングし、開発したセンサの生体計測の有効性および皮膚ガスによる生理学解析の可能性を調べる。
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