研究実績の概要 |
屋内コンテキスト推定技術は,建築物や地下街などの屋内において利用者の位置や行動,状況といったコンテキ ストを認識する技術であり,行動支援・健康・ナビゲーション・マーケティング等の応用分野において幅広い社会活用が期待できる.そのためには加速度,角速度,無線,磁場,気圧といった様々なセンシング情報を高度に 統合したロバストな認識の実現が求められている.可能な限り多くの実世界データを用いた認識技術の高度化を行うと同時に,国際コンペティションなどを通じて「ユーザの状況を把握する情報システムに支援された高度な社会」を実現するための基礎技術を構築する. 初年度は ,行動認識技術及び屋内測位技術の現状をサーベイすると共に,本研究が目指す「屋内コンテキスト推定技術」 の適用先についても随時調査を行う.具体的には,(1) PDR(歩行者自律測位)と行動認識技術の統合による屋内コンテキスト推定として多様な移動環境・デバイス・被験者での実世界データ収集とPDRのロバスト化や低消費電力化・安定化・レスポンス速度の向上などの検討を進めた.(2) 環境設置デバイスを活用した屋内コンテキスト推定:環境設置デバイスとして,WiFi 基地局, BLE ビーコ ン, LIDAR(レーザ測距装置)を用いて,相対測位と絶対位置を確率的に統合する手法を検討した.(3) 次年度以降の評価に用いる実世界データ収集を行うため各種イベントやショッピングモールなどにおける人流データ収集を継続的に行った.(4) 屋内コンテキスト推定プラットフォームの構築に向けて、バッテリ・通信料等への負荷軽減について基礎的な検討を行なった.さらにUbiComp2017(2017 年9 月) の併設ワークショップとして国際ワークショップHASCAを開催し,本研究が目的とする「屋内コンテキスト認識」に関わる国際的な研究討議・交流を行った.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は,初年度の成果に基づき,屋内コンテキスト推定の高度化やデータ収集の拡大を進める. (1) PDRと行動認識技術の統合による屋内コンテキスト推定:生活行動間の連接関係や時間,場所依存性などに加え,PDRで得られる相対軌跡を用いることにより高度な屋内コンテキスト推定を行う.2年度は,屋内地図を保有する知識ありの相対屋内コンテキスト推定に関する研究を行う. (2) 環境設置デバイスを活用した屋内コンテキスト推定:2年度は,環境設置デバイスとして WiFi と BLE ビーコンの両方を用い,認識精度向上を進める.また,G 空間 EXPO2016 で得られたデモグラフィック情報(年齢・性別・イベント参加への目的等のアンケ ート結果)を有する移動データを用いて,移動経路からユーザの目的やデモグラフィック情報の一部を推定する手法を開発する. (3) 実世界データ収集:継続的に屋内コンテキスト推定プラットフォームを開発し,実世界データ収集と参加者データ分析を他イベントでも利用できる枠組みを構築し,複数イベントでの実世界データ収集を行う.2年度は試行的なデータ収集を行い,実世界データ収集と屋内コンテキスト認識やマーケティングデータ分析を容易に行う枠組み基礎的な検討を行う.また,イベントだけでなく,日常生活行動として,名古屋 COI が保有している生活行動データ収集実験室を用いたデータ収集を行う. (4)屋内コンテキスト推定プラットフォームの構築:端末毎にセンサの挙動が異なる点についてサンプリングレートや精度が異なり,キャリブレーションの有無や特性が異なっても,認識精度が劣化しない枠組みを構築する. ■国際カンファレンスの開催: 初年度に引き続き,国際カンファレンスを開催する.国際コンペティションについても開催形態を検討していく.
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