研究課題/領域番号 |
17H01781
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
天野 敏之 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60324472)
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研究分担者 |
岡部 孝弘 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (00396904)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 感性情報学 / 拡張現実感 / プロジェクションマッピング |
研究実績の概要 |
本研究では,プロジェクタとカメラを用いたフィードバック系によって,光投影により工芸品の演出を行うピクセルフィードバックアニメーション技術の仕組を解明し,非平衡状態のプロジェクタカメラ系で所望の演出を実現する方法を明らかにする.また,その演出効果も明らかにする.この目的を達成するために,H29年度はピクセルフィードバックアニメーションの仕組みの解明とモデル化に取り組んだ.具体的には,高周波パターン照明が同軸落射により照射可能な実体顕微鏡を構築し,引箔西陣織の織構造の微細構造による光の拡散と反射の仕組を調査した.また,プロジェクタカメラ系の応答特性を含めた演出対象の局所領域のモデルを作成し,ピクセルフィードバックアニメーションで生成される光のにじみをシミュレーションによって再現した. 本研究に関連する成果としては,H29年度には国際会議発表2件,学術論文1件,解説記事2件のほかに,JSAP-OSA Joint Symposia 2017と質感のつどいフォーラムでは招待講演にてプロジェクタカメラ系を用いた見かけの制御の仕組とピクセルフィードバックアニメーションを用いた演出事例の紹介を行った.また,アウトリーチ活動として,NTTインターコミュニケーション・センターの20周年記念に際し,ICC20周年企画 リサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC×多元質感知「質感の再編集 Trans-materiality」として,NTTコミュニケーション科学基礎研究所と東京大学大学院情報理工学系研究科廣瀬・谷川・鳴海研究室とともに研究成果を応用した展示を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度は研究目的のS1で示したピクセルフィードバックアニメーションの仕組みの解明とモデル化に関して,A1: 演出対象の反射特性の調査とモデル化とA2: プロジェクタカメラ系の光輸送モデルの構築に取り組むことを予定していた.H29年度の前半に,撮像カメラを備え,高周波パターンが投影可能な光学顕微鏡を試作し,引箔西陣織のライトトランスポートの計測を実現した.また,計測されたライトトランスポート行列よりピクセルフィードバックアニメーションの現象の一部を再現することに成功した.ただし,光の明滅などを発生する演出に関しては再現ができていない.この演出を説明するためには,プロジェクタカメラ系の動特性を考慮したモデルが必要となるが,現在までに構築ができていない. A3: 基礎実験のためのプロジェクタカメラ系の構築については,実験環境が整っている.また,H30年度以降にはC3: 展示会などでの実演とアンケート調査による提案手法の評価を予定しているが,H29年度にはNTTインターコミュニケーション・センターでの展示の機会を得て,研究成果の発信ができた. 以上の成果を鑑みて,H29年度については研究はおおむね順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は「演出対象の反射特性の調査とモデル化」と「プロジェクタカメラ系の光輸送モデルの構築」によって確立したモデルを改良しつつ,S2 に示した所望の演出を実現する画像処理アルゴリズムを算出する方法の確立を試みる.すなわち,ピクセルフィードバックアニメーションに設定する画像処理方法を目標とする挙動から求める方法を明らかにする.ただし,この逆問題を解くことは挑戦的な課題であるため,H30年度には以下の二つのアプローチの確立を試みる. 一つはプロジェクタカメラフィードバック系の動的な数理モデルにライトトランスポート行列を適用することで,Reflectionと命名した光の明滅を伴うピクセルフィードバックアニメーションの再現を試みる.具体的には,解析的に厳密的なモデルを構築することは困難であるため,H30年度は制御系を線形システムとして簡略化し,ピクセルフィードバックアニメーションの画像処理もマスク演算で表現可能な範囲に限定する.ただし,このようなアプローチでは,所望の演出結果を得るために,様々な画像処理や様々なパラメータについてシミュレーションを行う必要がある.そこで,二つ目のアプローチとして,A3で構築したプロジェクタカメラ系を用い,幾つかのライトトランスポートについて演出パラメータと演出結果について調査してルックアップテーブルを生成する. H31年度には,プロジェクタカメラフィードバック系の動的な数理モデルの高度化を行いつつこれらの2つのアプローチを交互に適用することで目的の演出結果を得るための画像処理とパラメータを発見する方法を実現する.また,これらの研究成果より画像処理の操作パラメータと演出結果の対応関係の解明を試みる.
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